勇者少女(第一幕 第一章)「行け!勇者アルシアよ!」
王から命を賜った1人の少女は勇者として今日から旅に出る。
彼女の名はアルシア。本日16才になったのを機に、旅立ちを許された。
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数年前…彼女がまだ幼き頃、同じく勇者として旅に出た父親が行方不明になってしまった。城の兵士たちや他国の王の協力も経ての大捜索でさえ見つからず、
最後に得た情報は『大龍と火山で対峙した際に火山に落ちた』ことであった。
誰もがもう彼は死んでしまったのだと嘆いた、が幼き彼女と彼の妻は諦めなかった。
「夫は必ずどこかで生きています。」
「そして勇者ならここにいるではありませんか。」
絶望の玉座の間に、希望の一声、そして一度に向いた視線。
「王さま、私がもっと強くなったら、お父さんと一緒に帰ってきます!!
そしてお父さんが見つかるまではお父さんの使命も必ずや…!!」
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あれから数年経った。父が旅に出る前に教えてもらったことを繰り返し、時にはアリアハン兵に教えを乞い、毎日鍛錬を続けた。道具の使い方も覚え、魔法は多少なりとも使える。
『やっと旅に出られる。』
これから踏む順序を確認しながら玉座を後にしていると、人とぶつかってしまった。
「「あっ」」
「その…考え事してて!すみません!!」
「軽くぶつかっただけだろう?
それよりあんたは大丈夫か?」
手を差し出されて、律儀に下げていた頭を上げる。
「……
かっこいい……」
「ぼーっとしてるけど…鎧にぶつけちまったのか…?」
「あっ、違います!怪我は大丈夫です!あなたがかっこよくてその…じっと見てすみません…」
「あたしが?」
彼女は豪快に笑った。
「そりゃどうも。これでも一応戦士だからな。
それより、あんた…もしかして勇者様か?」
「…!はいっ!!アリアハン王の命と許しを得て旅に出る、勇者アルシアと申します!」
内側に秘める熱い想いは感じるが、少しだけ緊張している。何だか、少しだけ似合わない挨拶だ。
「ちょうどいい!ルイーダの酒場に登録してたんだが、今日が勇者様の旅立ちと聞いてね。そうと知れば、直接会った方が話は早いだろう?」
「え…もしかして…仲間になってくれるんですか!?今からルイーダの酒場に行こうとしてたんです。」
「ああ、あたしでよければ宜しく頼むよ!
改めて、
戦士アリス、勇者様に同行するよ。」
「あ、
勇者アルシア、あなたに…同行願い、ます!!」
「あんたってほんとに律儀な挨拶が似合わないな。」
堪えきれないと言うように彼女が笑った。
「おかしかったですか…?」
「いいや、まだ慣れてない感じかするからさ。これから覚えていけばいいさ。」
こうして、戦士アリスが仲間になった。