四、耳(誘惑) 好きだという感触がある。一瞬と言い換えた方が正しいのかもしれないが、それにしては、長く残る。感触と言った方が、小竜の感覚にはしっくりくる。大包平にたびたび、それを覚えてしまう自分がいる。それは、案外いくつもあって、彼が笑っているときや、真剣な横顔や、普通に飯を食べているときに、何度も思う。
日差しが強い、大包平の着ているインナーは汗で濡れていた。畑を耕すという重労働をやり終えたばかりだ。
「悪いね。」
小竜は一人で馬当番をしていた。ただ単に人手が足りなくて、小竜が一人でやることになっただけだ。時間をかければ終わる作業だし、馬たちが不満を漏らすのは、飼い葉の時間くらいだろう。それより畑を耕すという大仕事の方が大事だ。しかし、そんな小竜の手伝いを買ってでたのは、大包平だ。そちらの方が大変だからいいと、小竜が断ったのに、大包平は頑として譲らなかった。
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