罪深い食卓その診療所は目黒の駅から程近い雑居ビルの一室にあった。
診療所といっても、スタッフや医師を大勢常駐するような立派なものではなく、一人のカウンセラーが細々を行なっている心理相談室のようなものである。らしい。
紹介してくれた父曰く「懺悔室のようなものだ」とのことだった。
日々正しくあらんとして生きる杏寿郎にとって、懺悔室というのは一生無縁のものだと思っていた。父が懺悔しているところなど想像もできないが、いったいいつの話だろう。
杏寿郎は見るからに型の古いエレベーターで「4」のボタンを押しながら、子供達の前では決して弱さを見せなかった父のことを考えた。
「失礼!冨岡先生はいらっしゃるだろうか!十二時から予約している煉獄だが!」
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