恋する乙女は無敵です!【サンプル】 1 たとえ届かぬ想いでも
話し合いの場に、三毛縞斑が現れることはなかった。
約束の時間は、とうに過ぎている。残念だが、予想されたことだ、と、公園の木の下であんずはため息を吐いた。
ここ最近、彼は仕事の打ち合わせにも来ないことがあった。一対一の話し合いなど、ますます来ないだろうと思う。
それでも、もう少しだけ待つつもりだった。
来る気配がない彼のことを思い浮かべながら、あんずはスマホの時計表示をオフにして、そして辺りを見た。待ち合わせ場所である公園に到着した時と比べて、人の数は少なくなっていた。
あんずが立っている木の正面には砂場があり、子どもたちが遊んだあとがある。現に、先ほどまでそこには子どもたちが数人いたはずだ。
11140