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    bana283

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    bana283

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    ドラゴンから強引に卵を託されたので、命がけでお世話することになった召喚士夢主のお話

    「あ」
    ぱきり

    ついにこの時がきた──卵のために森の奥に移り住み、1ヶ月ほど経った頃についに殻に最初の傷がつきはじめた。
    ざわめく召喚獣たちが集合し覗き込んでくる。そうだね、君らのお世話の賜ね!

    巨大な蝶の暖かい羽毛に包まれた卵が、内側からの振動でゆらっ・・・ゆら・・・と揺れる。そしてヒビが入ったところが少し大きくなり、パリッと破片が剥がれ落ちた。
    そこから最初に現れたのは、小さな爪。
    それが緩慢に動いてパキパキとヒビを広げていくのを、両手を組み固唾をのみながら見守っていく。と、やがて上半身が現れたので、もういいかとふわふわのタオルで包み込みながら取り出してやった。
    てんやわんやと騒ぎ立てる召喚獣たちに見せるように、五体満足で産まれてきた子竜の身体を確認する。

    頭の中でファンファーレが鳴り響いたような気がした。ようこそ世界へ!

    ぴぎゃぁ、と鳴き声が上がるが特に抵抗はない。そのままぬるま湯に付け身体を清めてやる間も、身じろぎだけで完全に身を委ねているように見えた。強大な竜とはいえ、やはり生まれたては無力らしい。
    準備していたおくるみで包んでやり、長椅子にかけて抱きしめると、すぅと寝息が聞こえてきた。

    色素の乏しい柔らかいウロコで覆われた身体、柔らかい羽、まだ平たい造りの顔の上にちょこんと乗ったおできのような角。まだ開かない瞼の下は何色だろう。
    手探りでここまできた努力が報われた気がして、少し涙ぐんでしまう。それに気づいたイヌ型の召喚獣が、私の頬をぺろりと舐めて労ってくれた。
    「ふふ、ありがと」
    一段落してあたりを見渡せば、役割を終えたとばかりに蝶型が消え、代わりに現れた花型が甘い香りで癒してくれる。また、人型の一体が紅茶を入れてくれた。まったく、君たちは優秀ね。

    ここで生活する・・・というか日々魔獣に対応している間に、魔力が上がってしまった私が顕在化できる召喚獣の数も増えてきた。かれこれ6匹を同時に従えることが出来ているが、私が見た同職の最高は4匹だから、ちょっと凄いかもしれない。

    そうして自画自賛しながら心地良い疲労と共に、これからまたやってくるであろうめまぐるしい日々に思いを馳せていった。
    (ああそうだ)
    紅茶を一口飲んで、伝えなければならないことを思い出し一つだけ。特別な言葉なので、口に出して。
    「君の名前、キバナ、でどう? きっと立派な牙が生えてくるわね」
    返事がないことを了承とするのは、ちょっとズルい行為だろうか。

    その日から、あたり一帯の魔物の気配が消えた。どこかに行ってしまったらしい。
    恩恵に預かった近くの村では、やれ奇跡だのやれ災いの前触れだのと騒ぎが起こっていた。

    赤ん坊の竜は、目を開くことも出来ず食事もこちらから完全に世話する必要があったので、数日召喚獣の力を借りながら試行錯誤で行っていった。が、3日も経つとなんと目を開き震えながらも四足歩行が出来るようになってしまった。意味不明ながらなんらかの言葉も発している。

    そして段々とウロコも硬くなっていき、1ヶ月齢にしてウサギあたりからキツネぐらいに身長が伸びて体幹もしっかりしてきた。そしてある日──
    『こんにちはぁ』
    「ん?」
    挨拶が聞こえた気がして当たりを見渡すが、誰も居ない。腕の中で抱かれながらこちらをクリクリとした目で見上げる子竜のみ。
    『・・・ままじゃない、おせわ?してくれるヒト。いつもありがと』
    状況からして、頭に直接響く言葉の主はこの子だ。まぁ、思えば母竜もこうして念を飛ばしてきた。それにしては学習能力が高すぎやしないかな、おチビさん?
    『たまごのナカから、ぜんぶみてきたよ。いっぱいたすかっちゃった。もうちょっとまっててね。キバナ、すぐにおっきなるから! ──あ、あと、おなまえおしえて』

    柔らかく可愛らしい響きの声に、心がとろけるような気がしてすぐに自分の名前を告げた瞬間。
    またチリッとした感触が、首筋の後ろに走った気がした。





    ・2ヶ月齢で一時的に亜人になれるようになる。この頃から主の抱っこを嫌がるようになった。

    ・そしてやたら肉体を鍛えるようになった。
     エルフーンにからかわれて追いかけっこをしたり、ムーランドに飛びかかってはいなされている。棒を片手にキリキザンやエルレイドにもかかっていくようになった。「オレ、誰にも負けないようになる!」

    ・魔法の訓練もつけて欲しいというので、ウルガモスやドレディアを相手に練習するようになった。
    ウルガモスは自分が卵を抱いていたこともあって、母親代わりにと厳しくしつける。

    ・ウルガモスと飛ぶ練習を始める。まだ羽は未熟な為不安定で、夢主は下からハラハラと見守っている。
    「いつかねぇちゃんも乗せてやるからなー!」

    ・半年齢で完全な人型を維持出来るようになる。130cmほどの子供。
    生意気盛りで夢主につっかかっては、ウルガモスやらに怒られる。まだ爪も長くなく、ころころとして可愛らしい。
    「ねーちゃん、花やるよ! 好きだろ、花!」
    「あーもー泥だらけになって! お風呂沸かしてあげるから一緒に入りましょ、ね? お花ありがと、ドレディア、飾っておいてもらえる?」

    ・たまに人里に降りて物資を調達してくる夢主についてくる匂いが気になるようになり、ついていくことに。
    ・男の人が近づくと威嚇するが、それもまた愛らしいと周りから微笑まれる。
    「あらあら、おねえちゃん取られてヤキモチやいちゃったのかしらねぇ」

    ・1年ほど経った頃、少年の面影は消え始め、力加減が出来ずに夢主を傷つけてしまったことにショックを受けて、このまま近くにいてはいけないと考えるように。
    「オレ、旅に出るよ。竜のこの身体のことも色々調べたいことあるし。
     ここにいなくてもいい。国から出ない範囲ぐらいならいつでも探せるから、安全なところにいて」
    心配する夢主に、大丈夫だよ、オレ強いから。ねーちゃんの為にも死ねないだろ?


    ・キバナがいないのではわざわざ不便なココにいる意味もない、とまた冒険に出ることにする。
    なんやかんやで5年ほど経った頃、魔物の気配が少ない海沿いの穏やかな街を訪れ、ここらで腰を落ち着けてもいいかと思い宿を取る。

    そしてある日、比較的背が低いものが多いこの街には異質の、長身のサングラスをしたエキゾチックな青年を酒場で見かけた。
    明らかに、身につけているモノが違う。宝飾品をまとっていたらよからぬ輩に狙われやすいだろうに、身の程知らずかよっぽど盗まれない自信があるのか。
    目立ちそうなものだが、酒場の店主は特に気にするそぶりを見せない。となると、よそ者・・・というわけではないらしい。

    まぁ私には関係ないか。そう結論づけて席につくと花の乗ったカクテルが運ばれてきた。
    あれ、頼んだ覚えないけど・・・と給仕に困惑した顔を向ければ、貴女にだそうですよ、と促された方には見覚えある穏やかな笑顔があった。
    「ただいま、アンタの元に戻ってくるって言っただろ? ・・・髪伸びたな。それも悪くない」
    「え、キバナ?!」
    体格の良すぎる身体に、すっかり青年になってしまった彫りの深い顔。
    隣で会話していると、どうやら女性の扱いにも手慣れていて、洗練された姿に驚く。これが、あのやんちゃ坊主?昔のクセや召喚獣と戯れる姿に面影を見いだして笑ってると、「お、ようやく信じたか? ずっと会いたかったんだぜ」と頬を染めながら表情がとろけていく。
    「もーマセちゃって。まだ6歳児でしょ?」
    その表情があまりにも蠱惑的で、内心射貫かれながらも茶化してやった。
    「竜は5歳で育ちきるんだよ! そもそも【継承】が終わったら成人するもんなんだ」

    曰く、母竜のいた洞窟に行くと残っていた核から【継承】が正常に行われたらしい。
    それによって、代々次がれてきていた知識や戦闘能力が正常に受け継がれた。





    「やだ!オレのツガイはねーちゃんがいい!」





    エルフーン、ムーランド、ウルガモス、ドレディア、キリキザン、エルレイド
    コータス、ペリッパー、バンギラス、ユキノオー他
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