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    こころ

    @Chocola_0201
    高校生です。すきなものを書きます。
    最近はチェとすぐりこで頭がいっぱい。

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    こころ

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    すぐりこを書きたかったのに、また未満になってしまった理子ちゃん生存→夏油さん離反回避If(書きかけ)です。要素薄めですが、すぐりこだと言い張りたい。。!
    捏造に捏造を重ねているし、いろいろと中途半端なので、注意書きを読んで大丈夫そうだという方は、よろしければどうぞ。
    すぐりこ大好きなので、たくさん培養したいです!!

    ⚠️注意
    ・まだ執筆途中です(見るからに地の分が足りていません)。着地点が迷子になってしまったので、一旦ぽいぴくに投げました。皆さま、どうか私を煽ててください。
    ・理子ちゃんと夏油さんが個々のキャラクターとして推しなので、生かしておきたいがために書いております。かつ、すぐりこもそれはもう大好きです。
    ・理子ちゃんは撃たれたには撃たれたけれど、硝子さんに治してもらった感じです。ラッキーガールです。撃たれたことで護衛任務は失敗なので、夏油さんは気を病んでいます。
    ・五条先生にペンと消しゴムを投げた日と、灰原くんと九十九さんと会話した日よりも後の時間軸です。
    ・私は高校生なので、みなさまナメた目で読んでください。


     八月某日。五条は任務で出払っていて、硝子は治療中で、任務もなく、特にすることもない夏油は、高専内をぶらぶらとしていた。
     非術師を皆殺しにすれば──。
     数日前、九十九とした会話の内容が、ぐるぐると夏油の脳内を廻り続けている。他に誰もいない時間を過ごしていても、その考えが夏油を一人にはしてくれなかった。暑さも蝉の鳴き声も鬱陶しいはずの季節で、いつもなら気にするはずのそれよりも、あの醜い笑顔が、拍手の音が、脳裏に焼き付いて離れなかった。
     以前の夏油ならば、こういうときに親友を頼ったのかもしれない。が、今は彼といることで余計に焦燥感に駆られる。今の自分は、どれくらいまともに彼の顔を見て話せるだろう。

    「夏油……!」
    「……理子ちゃん」
     聞き覚えのある声に反応し振り返るとそこには、一年前に良くも悪くも濃い時間を共に過ごした、夏油のよく知る少女の姿があった。

    *****

     鈍い籠った金属音がして、自動販売機の口からお茶が出てくる。
    「理子ちゃんは? 何か飲む?」
    「うーん……じゃあ、飲もうかな」
     理子が何にしようかと自動販売機の方へ目を向けると、夏油が二枚目の百円玉を入れようとするのを見えた。理子は慌ててベンチから立ち上がる。
    「え、いいよいいよ! 自分で払うから!」
     ポケットから慌てて小銭入れを取り出す理子だが、時既に遅し。自販機の投入額のディスプレイには、赤いデジタル数字で『150』が浮かんだ。
    「で、何にするの?」
     奢り、お金の貸し借りは駄目だと先生にも黒井にも言われているのに、と理子はしぶしぶ「……オレンジジュース」と答えた。
     夏油が自販機のボタンを押すと、ジュースが出てくる。取り出して手渡すと、理子はまだ不服な表情で「ありがとう」と口にした。
     投入額に対し、オレンジジュースを買うのには三十円余った。夏油はお釣りを取り出し、先にベンチに座っていた理子の隣に腰を下ろす。
     数日前もここで座って人と話したな、と夏油は微かにデジャヴを覚えた。

     久々に話した理子は、一年前とは随分違っていた。口調も、本人曰く「学校では普通に喋ってる」ような口調だ。一人称も『私』であるし、あの特徴的な語尾ほとんど抜け落ちていた。尊大な態度も感じられず、逆に妙な感覚を覚えた。

    「今日はどうして高専に?」
    「学長さんに用があって。黒井はまだ中にいて、話してる」
    「もしかして……また誰かに命を狙われているとか……?」
     くび、とオレンジジュースを飲んだ理子が驚いて噎せる。
    「とっ……、とんでもないことを言うな!!」
    「ごめんごめん」
    「全然何ともないよ。二人のおかげ。あと、硝子さんも」
    「私達は大したことは出来なかった。最後まで理子ちゃんを護れなかった」
    「そんなことないよ。今、私は元気で、生きてる。……ちょっとハゲがあるけど。だから、それで十分。ありがとう」
     「どういたしまして」も「こちらこそありがとう」も。何も言えない。夏油は居たたまれない気持ちになり、目を伏せた。

     一年前、天元と同化する予定だった星漿体、天内理子の護衛を、当時高専二年の五条悟と夏油傑は請け負った。拉致された理子の世話係、黒井美里を救出しに沖縄に行き、束の間のバカンスを楽しんだ。
     高専に帰還したところを狙った術師殺しの奇襲により、五条も夏油も瀕死、理子は銃で頭部を撃ち抜かれ、世話係の黒井も命の危険に晒された。五条は自らの、夏油と二人は硝子の反転術式によって回復し、事なきを得たが、護衛任務は失敗に終わった。
     結果として同化はせず、理子は普通の女の子になった。九十九によれば、現在、天元は安定しているらしい。怪我をしたという理由から同化はなくなったが、理子が同化を拒否したという事実は上層部の方に出回っている。彼女をよく知らない故、よく思わない呪術関係者はかなり多いだろう。

    「……もし護衛が必要なら、私達がまたいつでもするよ。──いや、もう悟だけで十分か」
    「……どういう意味?」
    「──理子ちゃん、最近は学校はどうだい」
     はぐらかされたことに理子は気付きながらも、触れてよいことなのかが分からず、普通に返す。一旦、それ以上は踏み込まないことにした。
    「とっても楽しいよ。でも、進路を決めなきゃいけなくて。私にとって、すごく大事なことだから」
    「進路?」
    「もう三年生だから。進学先を決めないと」
    「進学先か。廉直は確か、高等部への内部進学があるんだったと記憶しているけど」
    「友達はほとんどそうだよ。お金があって、成績もよっぽど悪くなければね。私も、条件的にはまあ問題ないんだけど、実はちょっと迷ってて。今は前ほどお金がある訳じゃないし。今まさに、絶賛ツアー中って感じ」
     理子が星漿体でなくなってから、彼女達への金銭的援助はすぐに差し止めとなった。
    「ああ……すまないね。デリケートな話題に触れてしまったかな」
    「ううん。内部進学しないとしたら、行くところはもう決まってるんだ。あとはしっかり考えて、決めるだけ。二択だから、そこまでピリピリしてないよ。」
    「二択、か」
     理子もまた夏油と同じように、人生の岐路に立たされていた。しかし理子の方は、夏油のような危うい分かれ道ではない。もっと明るくて前向きで、未来が見えかけている。
     方や自分はどうだろうか。呪術は非術師を守るために存在する。弱者生存。その信念は崩れかけ、まさに一寸先は闇だ。

    「夏油、痩せた……?」
    「そうかな。悟にも言われたけれど」
    「二人から言われるってことは本当なんだよ」
    「夏バテじゃないかな」
    「……そう」


    「実はね、高専に入学を考えてるんだ」
    「え?」
    「今日はそれで、見学と相談に来たって感じ」
     夏油は驚いた。先ほど理子が言っていた『今まさに』の今は、ここ最近のことを指す今ではなく、現在進行形の今だった。
    「ほら、私は呪いが見えるから。呪術師としての最低限の素質はあるし……あっ、呪術師になるかどうかは微塵も決めてないけど」
    「どうして高専に来たいのかい。いろいろ大変なのに」
     天元との同化を拒否したことで、理子は既に上層部からは問題視されている。それで更に呪術界に身を置くのはかなり大変なことだ。高専所属以外の術師からの風当たりは強い。呪術師になったとしても、昇級もしづらいだろう。
    「うーん……夏油みたいになりたいから」
    「私──?」
    「あの日、あそこに辿り着くまで私の身も、あと夏油は心も守ってくれたでしょう。十四年間、同化するためだけに生きてきたのに、自分の人生を生きていいんだ、って夏油は初めて言ってくれた。すごく嬉しかった」
    「でも、それは悟と二人で決めたんだ」
    「そもそもの言い出しっぺは夏油だ、って五条に聞いた」
    「……」
    「だからもし私も呪術が使えたら、黒井とか、友達とか、そういう大事な人達のことを守れるんだなって。夏油みたいに、私も強くなりたい」
    「私は、強くなんかないよ」
    「……え」
      
     夏油はぽつぽつと理子に語り出した。
     今こうして生きられているとしても、あの日、理子が銃で撃たれてしまった時点で護衛任務としては失敗だったということ。理子が同化しなかったにも関わらず、天元は安定しているということを聞いて、これではまるで理子は消耗品のような扱いだと思ったこと。
      盤星教の施設で理子の死を望む集団を目の当たりにしたことをきっかけに、自分の中での非術師の価値や、呪術師としての信念が揺らいでいること。非術師が生み出す呪いに仲間が消費されていくことに疑問を抱いていること。最近はいっそのこと、彼らを殺してしまえばいいとさえも思っていること。
     二人で最強だ。そう豪語していた片割れは、一人でも最強になったこと。その背中がどんどん遠のいて、置いていかれたように感じること。

     理子はただ静かにひたすら話を聴いていた。

    「──話してくれてありがとう」
    「……いや。本来、こういうことは人に話すようなことじゃない」
    「そういうところ。私に話す機会がなかったらずっと独りで抱え込んでたはず、ってことでしょ。夏油は真面目すぎるよ。助けたい人だけ助けるのは駄目なの?」
    「呪術は、非術師を護るためにあるんだ」
    「じゃあ夏油は、非術師なら誰だって守るの? どんな極悪人も?」
    「……そうだよ」
    「本当にそう思ってる?」
    「……」
    「夏油だって、呪術師である前に一人の人間だよ。なんでもっと自分のことを大事にしないの? 私の気持ちは尊重してくれたのに、自分のことはどうでもいいの?」
    「……」
    「悪い人達が、私を殺すために黒井を危険な目に遭わせた、って。私の死を喜ぶ人達がいた、って。私だって、それを聞いたときは、腸が煮えくり返る思いになったよ。だから、怒るのは当たり前。私も赦せない」
     理子が握りしめたスカートにぐしゃりと皺が寄る。
    「でも残念なことだけど、そういう人達は一定数いて、それ自体はどうしようもないんだよね。私が呪術師だったら、その人達が力を持ってない非術師だとしても守りたいなんて思えないよ」
    「自分が守りたいと思わなくても、そうしなければいけないんだ」
    「呪術師はみんながみんながそうなの? 自分には力があって他の大勢の人にはないから、とか関係ないと私は思う。現に私は、私が守りたいと思う人達を守るために、呪術を学びたい、って思ってるから。救いたいと思えないような人を救わないといけない状況はあるだろうけど、その時は、責任とか義務とかは考えないで、お情けでいいじゃん。私は、正論の前に自分の気持ちがあることは悪いことじゃない」
     大衆のために犠牲になるという使命よりも、自分の未来を選んだ少女の言葉は眩しくて、重みがあって、そして熱を持っていた。
    「そういうもっと悪い人達のために夏油が悪い人になるのは、私はいちばん嫌。だから──」
     理子はそこで言葉を切った。そしてベンチから立ち上がると、夏油の前に立つ。
    「帰ろう、夏油」
     あの日、差し出された手を取った理子が、今度は逆に夏油に手を差し伸べた。
     夏油が見上げた理子は後ろから照らす日の光に輝いていた。彼女と同じ場所にそこに帰れば──
    「……うん」
     夏油はその手を取り、ベンチから立ち上がった。ちょうど窓から日の差し込む位置に入り、うっすらとオレンジ色に染まった床に、やや伸びた二人の影が並んだ。
    「ふふ、今度はちゃんと手が取れた。帰れる」
    「……理子ちゃん」
    「何?」
    「ありがとう」
     情けない声だった。だがそれを聞いて理子は明るく笑った。
    「やっと夏油の口から明るい言葉が聞けた」

    *****

    「私、高専に入学することに決めた」
     夏休み明け最初の休日、高専に来た理子は晴れやかな顔で宣言した。
    「本当にいいのかい。わざわざ茨の道を歩くなんて」
    「誰かに守られてばっかりのお嬢様は嫌だし、それじゃ駄目だから。……死なないように頑張ります」
     呪術界に身を置く以上、生半可な気持ちではいられない。そこに待っているのは、学生だろうが、どんなに等級の高い者であろうが、常に死と隣り合わせの世界だ。
    「はは、それが一番大切だ。でもまあ、理子ちゃんは、案外コッチに向いてるかもね。この前、私のことを助けてくれた」
    「うーん、でも……なるとしても多分、私は夏油みたいに立派で模範的な呪術師にはなれないよ。私が助けたい人を助けたいだけだから」
    「それはもう、私も一緒さ」
    「……!」
     夏油はすっきりとした顔で言った。嘘つきの顔ではない。今のはきっと、彼の選んだ本音だ。

     星漿体としての同化を拒み、普通の生活を送ることができるようになったはずなのにそれを選ばず、向かい風の中で呪術界に身を置くことを決めた少女。
     かつて呪術師でいるからにはと掲げていた正論を撤回し、自身の匙で人々を守ることにした特級呪術師の青年。
     ある立場から見たら間違っていて、またある別の立場から見たら正しい。彼らは、自分自身のための信念を掲げて歩き出したのだ。

    「いやー。理子ちゃん、ミッションスクールの次は仏教系かー」
    「でも、表向きなんでしょ」
    「いいんだよ、そこは」
    「……面白がってない?」
    「そんなことないよ」
    「あ、ほら! 嘘つきの顔じゃ!!」
     出会ったばかりの頃に交わしたような軽口の応酬が、また繰り広げられた。
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