トマルチちねた「ルチアーノ殿。本当に良いのですか?」
トマスはレイピアの先をルチアーノの喉元に突きつけながら何度目かの言葉をルチアーノに問いかける。
「嗚呼。最期くらいお前の手で逝かせてくれ」
ルチアーノは微笑みながらトマスの震えるレイピアを握りしっかりと喉元に突きつける。
「…私が看取るという手もあると言うのに」
苦しげな顔をするトマスにルチアーノは首を振る。
「生憎、”病”に殺されるくらいなら好きな相手に殺されたいだろ?」
ルチアーノは病に侵されていた。余命幾許もない。
だからこそルチアーノはトマスに殺して欲しかった。トマスはルチアーノを殺したくなかった。
「頼む…トマス」
「っ」
悲しげに言うルチアーノの言葉に、意を決した表情をしたトマスはルチアーノの喉元に突きつけてたレイピアを構え、そして。
ーーー
「…お慕いしておりました。ルチアーノ殿」
トマスは横たわっているルチアーノの頬を撫でながら1粒の涙がルチアーノの頬に零れ落ちる。
ルチアーノの表情は何処と無く微笑んでいるようだった。