【ショタは正義~お兄ちゃん奮闘編~】 【ショタは正義~お兄ちゃん奮闘編~】
「えーと、キラさん。俺はシンだよ」
小さくなったキラにまずは自分の名前を覚えて欲しくて名前を言う。
「⋯⋯しーにちゃ! うー⋯⋯」
一生懸命言おうとしてくれたけど、上手く言えなくて落ち込んでしまったのを見て、あまりの可愛さに悶絶した。
(可愛すぎるんですけど!)
はっきり言って可愛すぎる。
俺がこんな可愛いキラさんの世話していいのか!?いや誰にも世話係は渡したくない。
「キラさんの呼びやすい言い方でいいよ」
兄ちゃんなんて言われてシンはご機嫌だった。
「しん⋯⋯」
おずおずと言ったいつもと変わらない呼ばれ方に、やっぱりこれが一番しっくりくるなと感じた。
「うん。それでいいよ」
「えへへ」
へにゃっと笑ったキラがまじで可愛くて、思わず持っていた端末のカメラを構えた。
その時、くぅ~と可愛い音が聞こえた。
自分のお腹を見るキラがお腹を小さな手で撫でる。
「お腹空いた? 何か食べよう。何食べたい?」
聞いてみるも戦艦のミレニアムに用意出来るものは限られる。
「はんばーぐ!」
元気よく答えたキラに、シンは嬉しくて頬が緩む。
ハンバーグならメニューにあったから大丈夫だろう。
「よし。じゃあ食べに行こう」
「しん⋯⋯だっこ」
んっと甘えた様に手を伸ばすキラに、シンは目を瞑る。
(っあー! 可愛い!)
キラが甘えただと言うのはアスランから聞いてはいたが、シンに甘えてくれる事が無かった為とても新鮮だった。
「いいよ」
どうにか持ち直しキラを抱っこして食堂へ向かった。
時間帯的に人が少なく、これなら大丈夫かとキラを椅子に座らせてとハンバーグの乗った食事トレーを2つ運ぶ。
明らかにキラからしたら量が多いが、残りはシンが食べればいいだろうと考えて横に並べる。
「はい」
そのままだと多分食べられないだろうからと、小さく切ってあげて小皿に盛ってキラの目の前に置いてあげると、嬉しそうな声を上げてくれた。
「わぁー!」
「はい。じゃあいただきますして、食べましょう」
「うんっ! いただきましゅ!」
きちんと手を合わせて言う姿は本当に可愛らしい。
フォークを手に持ちハンバーグに突き刺すとパクパク食べた。
普段のキラからは想像出来ない食べっぷりに、いつからあんな感じの食生活になったのかと考える。
(キラさんが元に戻ったらもっと食事誘おう)
美味しそうにハンバーグを食べる小さいキラを見て決意した。
食堂に代わる代わるやってくるクルー達が小さくなったキラを見ては癒されている中、うとうとと船を漕ぎ出したキラに気が付いた。
手に持ったフォークが落ちそうになり、慌ててキラの手から取る。
「眠くなった?」
「うーっ」
眠くなったのがグズり出したキラに、周りの大人が慌てる。
「あー、じゃあ部屋に戻ってて寝ましょうか」
流石にここで寝るのは無理だと判断し、半分寝かけているキラを抱っこする。
「やぁっー! はんばーぐ、たべりゅ!」
イヤイヤとグズるキラにシンは困った顔をすると、ちょうどやって来たルナマリアが声を掛けてきた。
「あら、眠くなったの? 隊長」
「あー、そうみたい。けどハンバーグまだ食べるっていってさ」
「なるほどね。じゃあシンは隊長抱っこして部屋に連れて行って。私はトレー持って行くから。少し寝て起きたら食べたらいいんじゃない?」
「そうだな。サンキュー、ルナ」
流石は姉スキルの高いルナマリアだと感心しつつ、半分また眠っているキラを連れて部屋に帰った。
部屋に着くとベッドに寝かせてやる。
「ふふ。隊長可愛い」
「本当にな。キラさんもこんな時があったんだなぁて思うも変な感じだ」
「まぁそりゃあ私達にもこういった頃はあったでしょうけど」
そう言いながらキラの口元についた汚れをハンカチで拭いてやるルナマリアは、母性本能が大いに擽られているようでその表情は柔らかい。
「私は食事取ってくるから、ちゃんと隊長のお世話するのよ?」
「あぁ」
今の間に自分もご飯を食べてしまおうと、キラが食べるであろう分を残してすべて食べ終える。
くぅくぅと眠るキラを見ていると睡魔が襲って来て、くわーっと欠伸が出た。
「⋯⋯多分まだ起きないよな⋯⋯」
時計を見て、時間はまだあることを確認してからキラを抱き締めるようにベッドに潜り込む。
「んんー」
キラがビクッと身体を震わせたかと思ったら、シンの腕にしがみつく様に丸くなったキラを見て、可愛いなぁと頬が緩むのを止められない。
「⋯⋯いつものキラさんも、こうして甘えてくれるといいんだけどな⋯⋯」
呟きながらシンも睡魔に襲われてそのまま眠った。
ぺちぺちと頬を叩かれる感覚に目が覚める。
「んんー? あれ⋯⋯やべっ、寝てた! 今何時!?」
慌てて時計を見ると寝始めて1時間経過していた。
「しん、おきたー!」
「すみません、寝ちゃって。いつ起きたの?」
「んー?」
分からないとばかりに首を傾げて笑顔のキラは本当に可愛すぎる。
「いいや。ハンバーグ食べる?」
「たべりゅー!」
「はい」
避けてあったハンバーグを美味しそうに食べ終えた頃、話を聞きつけたアスランがメイリンと共にミレニアムにやって来て突撃して来たが、驚いたキラに盛大に泣かれて拒絶されたアスランが珍しく固まり白くなっていたのを見て、半分同情、半分優越感に浸ったのは言うまでもない。