フリが出来るうちは恋じゃない!「恋人のフリをしてくれませんか」
真面目な顔をしたリチャードの口から、俺の手にあったお茶請けのクッキーが逃げ出してしまうほど衝撃的な頼み事が飛び出てきたのが数ヶ月前。俺がロンドンに単身で乗り込んだ時。その時の俺はこれでもかと言うほど混乱して、食べかけのクッキーを思い切り机に落としてしまったことにも気づくことが出来なかった。
「お…」
「お?」
「俺が?」
「はい」
「リチャードの?」
「はい」
「恋人…の、フリ?」
「パーフェクト。復唱すら出来ないようだったらどうしようかと思いました」
復唱できなくなるかもしれない程に衝撃的なことを言ったのはお前だ。そんなツッコミをグッと飲み込み、リチャードに拾われたクッキーを受け取りひとまずソーサーに置いた。今食べたら喉に詰まりそうだ。
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