自分のことをあまり話さなかった祖父の話 私の家はいわゆる成金というもので、お父さんの事業が上手くいってお金持ちになれたのだ。
「どうしてそんなにお仕事たくさんがんばるの?」
小さい頃の私はお父さんといられる時間が少ないことに悲しみ、両親に何度もそう聞いたのを覚えている。
「お金がないよりあったほうがいいだろう?」
お父さんはそう言った。
「家族のためなのよ」
お母さんはそう言った。お父さんと一緒にいる時間が少ないのは悲しいけど、家族のためなら仕方ない。お金があったほうがいいのは当時はよくわからなかったけど、お父さんがそういうならそうなんだろうと納得した。
子供の私から見ても両親は仲が良く、二人が喧嘩したところはあまり見たことがなかった。だから、二人の喧嘩はよく覚えてる。喧嘩の理由はいつも決まって同じこと。おじいちゃんが持ってるらしい何かをどうして売らないのか、という、私にはちんぷんかんぷんなことだ。お父さんはいつも「あれは相当な金になるんだぞ」と言い、お母さんは「あれはお父さんの宝物なのよ」「お父さんがどこに隠してるかなんてしらないわ」と言っていた。
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