『Mir fällt ein Stein vom Herzen おかわり』「するの?」
「………何をですか?」
「交尾」
「こっ、」
はらはらと涙を零す儚い美しさと言動が一致していない。先ほどから危惧していたが、これは養い親の情操教育に問題があるのではないだろうか、と五月雨江は頭を抱えた。その一瞬、村雲江はとん、と軽く五月雨江の肩を押して身を離した。
「雲さん…」
五月雨江の手を振り払って立ち上がろうとしたものの、その場に尻もちをついたまま、村雲江は今度はひどく悲し気にこちらを睨みつけていた。
「…したい」
「わんっ?」
思わず聞き返すと、村雲江の眉がますます下がった。
「あめさんは俺としたくないの?」
番の雌にここまで言われて引き下がるのは雄犬としての矜持が、沽券に関わる。
「し、したいです」
「……」
「…交尾、したいです」
名より実をとれ。