八分咲き『ゲームのパラメーターみたいに、自分の恋の進行度合いが一目で分かればいいのにね』
何気なく放ったであろう寧々の言葉が脳裏から離れない。
そう思う。
もしそうであったなら、伝えることが出来ないこの想いを胸の内に燻らせることもなかったのに。
◇◇◇
『類くん類くーん! セカイに桜が咲いてるよー!』
スマホが突然光ったかと思えば、ホログラム姿で現れたミクくんが楽しげにそう語った。
セカイ。桜。好奇心がくすぐられる言の葉の並びは、機械いじりに勤しんでいた僕の手を止めるには充分だった。
「おや。セカイには桜がないと言っていたけれど、見つかったのかい?」
『うん! 昨日までなかったはずだけど、さっき森の近くを散歩してたら発見したんだー! 春だから生えてきたのかな?』
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