男だろうが女だろうが、生き物だろうが植物だろうが、月にさえ恋をするのが魔法使いだ。
と言えども物言わぬ花に焦がれる趣味はなく、手に抱くなら女の柔い腰が好みではあった。自意識も生まれた時の性別に従って生きてきた。そも、数多の手下を従える頭として盲目に恋などにうつつを抜かす暇などなく、火遊びはすれども恋などとは無縁であった。
ただ、まあ、色恋に纏わる駆け引きや手練手管は長く生きていれば自然と身につくものでもある。いい女がいたら口説くし、そういう雰囲気になったらベッドに縺れ込みもする。誰に習うものでもない。火傷をしないよう軽く火をつけて遊びたがるのは人間も魔法使いも同じだ。そういった欲は、誰にでも備わっているものだろう。
3267