どん、と何かにぶつかる気配がして、瞬間、白と黒のツートンカラーが目に入った。
「おっと、すまない。ブラッドリーか。こんなところで何してるんだ?」
「何してるも何も、今帰ってきたんだよ。厄介な傷のせいで飛ばされてたからな」
「ああ、そうか……大変だったな」
不機嫌さを隠そうともせず、ブラッドリーは忌々しげに舌打ちをした。カインの傷も傷で厄介なものだが、ブラッドリーのものも大変だなあと他人事のように思う。そもそも厄介でない傷などないが、触れると見える解決法があるカインと違い、ブラッドリーは防止策や解決策があまりない。遠くに飛ばされてしまえば箒に乗って帰ってくる他ないのだ。
ミスラは空間転移魔法を使えるが、簡単そうにやっているもののあれは相当高度な魔法技術である。ミスラ以外でできるとしたならばオズくらいなものだろう。
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