十ニ畳ほどの居間に六畳の部屋が二間、風呂、トイレ、洗面所があるだけの手狭な平屋が尾形の住む家だった。
両親が幼い頃に離婚してから越してきたこの借家に住んでもう十年と少し。定期的に送られてくる更新の手続きを滞りなく済ませて五回目。
世間一般的に見れば築三十年は経過するこの家は古くて使い勝手が悪い。けれど尾形の物心着いた頃の記憶では、既にこの家で母と二人慎ましく生活していたため、今更不便とは思わなかった。そもそも親子二人だけで暮らすのであれば、これだけの広さがあれば十分だ。母も尾形も持っている物はそう多くないから尚更。
そんな住み慣れた家だが、一つだけ悩みがあった。
よく知らない人の声がすることだ。
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