運命よりも執着 「……本当にごめんなさい」
女はそう言って悩ましげな表情でおれに頭を下げた。おれがそんな必要はないと言い切れば、それでもと少しさみしそうな顔をしてから一拍置いて感謝の言葉とともにあなたやっぱりいい子ね。と微笑む。おれが礼をするのはこっちの方だと言って、これからの事を聞けば察しのいい女は気持ちを切り替えたのかしっかりとした声と様子で状況をまとめて話す。
「状況は前に言った通りになった。わたしはここからずっと東の、母国に栄転することになってここからいなくなる」
「ああ、おめでとう」
「ありがとう、あなたのそういうところ大好き」
「おれもあんたのそういうとこが好きだ」
「うれしい。それで、これからだけど引っ越すまではもう三ヶ月ほどしかないのがいまね」
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