不義を喜ばないで、真理を喜ぶ。5.不義を喜ばないで、真理を喜ぶ。
手袋の下に隠れた指輪を、もう片方の指で確かめながらオーエンは鼻歌を歌って、市場を眺めていた。箒のうえから見下ろす人間たちの忙しない動きを見ているのは活力が湧き出てくるものだ。
中央の国の人間はいい意味で平均的だ。南ほど平和ボケもしていないし、西のように狂ってもいない。東のように根暗で陰湿でもないし、北にいる人間ほど屈強でもない。どの文化もそれなりに育って進んでおり、よく見える欠点とすれば身分の差や貧困の差であろうか。城下町の近くは、それなりに栄えてはいるが、遠くなっていけばいくほど、王子様の知らないような問題ある場所なんて、たくさんある。
オーエンはミスラとの久しぶりのごっこ遊びに浮かれていた。賢者の魔法使いになる前も、一緒にこうやって遊んだことがある。あそこの魔法使いを仕留めるのは、どちらが早いかなんて競ってみたり、レアな魔法具を見せ合って、どちらがより高値で売れるかでマナ石をかけたり、そんなくだらないことでよく遊んでいた。今回の遊びは、一番面白いかもしれないと思った。純粋で美しいものを汚していくのは、生まれながらに生き物が抱く背徳感なのかもしれない。
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