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    11minkus

    @11minkus
    書きかけの小説とか、落書きとか

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    11minkus

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    フォロワーさんとのお題あみだ作品
    『ヤンキー系攻め×ヒーロー受け』

     俺こと根布 涼太ねふ りょうたが、小学校に入る少し前の頃。
    『悪の組織』を名乗る謎の集団が、日常を一変させてしまった。
     自分たちの活動範囲を広げるために、人々を傷つけたり、街を破壊するなど、好き勝手していた。
     ある日。組織の幹部に襲われた幼い俺は、暴れて抵抗したものの全く敵わなかった。
    『やめろ! やだ! はなせーー!!』
    『ヒャハハ、ガキでも人質としては使えるからな』
     どこかへ連れて行かれそうになった瞬間、『待て!!』という声が耳に入った。
     声の主は、悪の組織の活動を阻止するために現れた、『正義のヒーロー・レッド』だった。
     レッドは隙をついて、俺を助け出してくれた。
     がっしりとした太い腕に抱かれた感覚は、今でも忘れられない。
    『君は安全なところへ隠れているんだ。俺が来たからには、もう安心だ!』
     大きくて逞しい背中は頼もしく、ばさりと白いマントが翻り、鼻から上は赤いマスクで隠れているが、ニッと見えている白く輝く歯が眩しい。
     安心させてくれる言葉が耳に残り、見せてくれた笑顔が、目に焼き付いて離れない。
    『俺も、あんな風にカッコいい人になりたい……!』
     あの日俺は、正義のヒーローに憧れ、恋をした。


     ◇


    「初恋は実らねぇってな。……チッ」
     ふと幼い頃のことを思い出して、苦い気持ちになってしまう。
     守られるばかりではなく、俺もヒーローを守りたかった。そして抱いた恋心は、実る望みなど全くない。
     いつかレッドを守れるような男になれるように、身体を鍛えたりしてみた。しかし高校生になっても、俺の小柄な体格は変わらなかった。
    「努力したって、なんも変わんねぇ」
     努力だけでは、どうにもならないことがあるという挫折。そして、憧れの存在に近づくことができない絶望感から、俺はグレた。
     悪の組織ほど悪事を働くわけでもなく、ちょっとヤンチャをするヤンキーといったところか。今の状態も中途半端だと、自分で自分が嫌になってしまう。
     むしゃくしゃして、染めすぎて痛んだ金髪をガシガシと掻き乱す。
    「……コンビニでも行くか」
     憂さ晴らしに、仲間内の溜まり場にしている近所のコンビニに向かうため、家を出る。
     すると、ちょうど隣の家に入ろうとする男に声をかけられた。
    「涼太、こんな時間に出かけるのか?」
    「俺がどうしようと勝手だろ」
     声をかけてきたのは、隣の家に住む上井 雄二うえい ゆうじだ。どうやら仕事帰りらしい。
     短く切り揃えた黒髪に、着ているスーツがはち切れそうな、ガタイが良く筋肉ムキムキの身体がカッコいい。
     雄二とは十歳ほど歳の離れた幼なじみで、今は警察官をしている。
     兄弟のいない俺は、幼い頃に遊んでもらったりして、家族以外で唯一大好きだと言える人物だ。
     雄二は昔から正義感が強い人間だった。小柄なせいで同級生にからかわれやすい俺を、いつも守ってくれていた。
     だが、俺が悪の組織に襲われる事件があってから、遊ぶ機会が全くといっていいほど無くなってしまった。
     大好きな『雄二兄ちゃん』と過ごせなくなり、嫌われてしまったのかと思って、初めの頃は大泣きしていた。
     理由を雄二に聞いてみても、はぐらかされてしまい、それも俺がグレる原因のひとつだったかもしれない。
     こうして会話したのも、何ヶ月かぶりだ。
     話しかけてもらえて嬉しいはずなのに、こんな自分の状態が情けなくて、どう話していいのかわからない。
    「最近また組織のやつが暴れているっていうからな」
    「うっせぇ」
     忠告されても素直になれず、悪態をついてしまう。
    「まあ、気をつけろよ」
     雄二はそう言うと、自分の胸ほどの高さにある俺の頭を、ワシワシと撫でてきた。
     いつまで経っても、ガキ扱いされているようで恥ずかしい。
    「恥ずかしいから、やめろよ……っ!」
    「ははは、悪い悪い。じゃあな」
     俺がムキになって手を払うと、雄二は眉を下げて笑顔を作り、手を振って家の中へ入っていった。
     そんな顔をさせたいんじゃないのに。
    「……チッ」
     雄二に触れられた頭が熱く感じて、俺は思わず舌打ちをせずにはいられなかった。


     ◇


     コンビニまでの道のりには、そこそこ大きな公園がある。
     公園の中は街灯が少なく暗いのだが、ここを抜けると近道だ。
    「だりぃから、抜けてくか」
     軽い気持ちで公園に入ったまでは良かった。しかしそこに、悪の組織のグループが数人が現れた。
    「っ……!」
    「あん? なんだよ小僧。俺らのアジトに入ってきた挙句、ガンつけてきやがって」
    「んなことしてねぇ!」
    「生意気だな。ま、ちょうど労働力が欲しかったし、組織の下っ端にでもして働かせるか」
     夜の公園がこいつらのアジトになっているなんて、全く知らない。完全な言いがかりだ。
     下っ端は四人いるが、俺一人で相手にできるだろうか。
    「ふざけんな! 誰がお前らの下になんてつくか!!」
    「ギャーギャーうるせぇヤツだ。やっちまえ」
     下っ端のうち二人が、俺に襲いかかろうとした瞬間。
     辺りが眩しくなり、思わず腕で目を覆うと、下っ端たちの「ぎゃあぁぁ!」という叫び声が聞こえた。
    「……? えっ……!?」
     なにかと思って目を開けてみると、襲いかかってきた下っ端たちが地面に倒れていた。
     何事かと思って視線を移すと、風に翻るマントと赤いスーツが視界に入る。
     忘れるはずがない。正義のヒーロー・レッドだ。
    「俺が来たからには、もう安心だ!」
     あの時と同じ頼もしい姿と言葉で、俺を守ってくれるレッド。
    「ここは危ないぞ。君は下がっていなさい」
    「嫌だ! 俺もレッドと戦う!」
    「君を危険な目に遭わせたくないんだ。……分かってくれ」
    「ん……分かった」
     レッドの有無を言わせない眼差しに、俺は首を縦に振るしかなかった。
    「足手まといのガキ庇いながら、戦えるんですか〜? ギャハハ」
    「やかましい!」
     いくらレッドが強くて逞しいとはいっても、四人相手では厳しいのではないか?
    「くそ……俺だって……!」
     助けてもらってばかりじゃなくて、俺だってレッドを守れるってところを見せたい。
     そう思った俺は、下っ端の一人に向かって叫んだ。
    「お前の相手は俺だ!」
    「うるせぇガキだ。さっさと始末しちまったほうが良さそうだなぁ」
     イラついた様子の下っ端は、ナイフのような武器を取り出し、襲いかかってきた。
     さすがに丸腰の俺では、どうにもできない。
    「危ない!!」
     俺を庇おうと、レッドが俺と下っ端の間に割って入る。
     振り上げられたナイフに、レッドの左腕は傷をつけられてしまった。
    「ぐあ……っ!!」
    「レッド! レッド……! ごめんなさい、俺が無茶なことしたから……!」
     着ているヒーロースーツが破けて、腕から血を流す姿は痛々しくて、ジワリと目に涙が溢れてしまう。
    「ヒャハハ! ヒーロー様もザマァねぇな!」
    「この野郎……!!」
     レッドのことをバカにするような下っ端の言葉に、怒りを抑えきれない。
     その時、レッドと色違いのスーツを着た四人の男女が現れた。
    「レッドさん! すぐに駆けつけられなくて、すみません!」
     緑色のスーツの男が、レッドの腕に布を巻いて止血している。
     レッドとグリーン、俺の三人を背に、ブルーの男、イエロー、ピンクの女が下っ端に向かって攻撃の構えをとっている。
    「皆……すまない。一人では対処しきれなかった」
    「さっさと終わりするぞ」
    「私たちにかかれば、こんな下っ端すぐに始末できるわ」
    「そうね。レッドさん、動けますか?」
    「ああ。問題ない!」

     その後は凄まじかった。
     五人が息を合わせると、圧倒的な力を発揮して、あっという間に下っ端たちは全員倒された。
    「覚えていやがれー!」などと捨てゼリフを残して逃げていく姿は、とても無様だ。
    「すっげー……」
     俺はへたり込んだまま、呆然と五人の活躍を見守ることしかできなかった。
     そんな俺の前に、レッドは右膝をついてしゃがみ、目線を合わせて安心したように微笑んでくれる。
    「ケガがなくて良かった。下っ端たちはいなくなったが、まだ組織の奴らがいないとも限らん。早めに家へ帰ることだ」
    「……分かりました」
     五人の圧倒的なパワー、自分の無力さ、それを目の前に突きつけられた気がしてしまう。
     自分のせいでレッドがケガをしてしまったことも、申し訳なくて居た堪れない。
     溜まり場に行く気にもなれず、俺はトボトボと家へと帰るのであった。


     ◇


     翌日。気分が晴れないまま、学校へ向かおうとすると、家の門を出たところで雄二と鉢合わせした。
     雄二は休みなのか、スーツ姿ではなく、長袖の白いカットソーにデニムという、カジュアルなファッションだ。
     身体のラインが出るような、ピチッとしたサイズの服だから、目のやり場に困る。
    「涼太、おはよう」
    「……はよ」
     相変わらず素直な態度を取れない俺に、雄二はニッと笑顔を見せてくれる。
    「これから学校か?」
    「まあ、そう……」
    「気をつけて行ってこい」
     相変わらずガキ扱いするように、頭を撫でてくる雄二の手を振り払おうとした時。カットソーの隙間から包帯が見えた。
     俺は思わず雄二の左腕を取り、袖をまくり上げる。
    「おわ!? どうした?」
    「雄二……このケガ……」
    「あ、ああ。ちょっと転んじまってな」
     運動神経も抜群な雄二が、転んで腕に包帯を巻くほどのケガをするだろうか?
     ふと、昨日『ヒーロー・レッド』のケガをしたところが、頭の中をよぎった。
    「もしかして……雄二が、ヒーロー・レッド……?」
    「……っ!」
     息を呑む雄二に、確信を持つ。
    「本当に、そうなんだな」
    「はは……バレちまったな」
     雄二は気まずそうに首のあたりをさすりながら、そう言った。
    「ああ、俺がヒーロー・レッドだ。自分からは正体を言っちゃいけないことになっているから、涼太にも話せなかったんだ」
     俺が憧れたヒーローの正体が、雄二だったとは。驚いてはいるが、信じられないとは思わなかった。
     初恋の相手である『ヒーロー・レッド』は、大好きな『雄二兄ちゃん』だった。
     そうだと分かれば、あの時恋に落ちたのも納得できるし、ますます雄二のことを好きだと思ってしまう。
     だが、俺は無茶な行動をしたせいで、雄二にケガをさせてしまった。
     大好きな人を傷つけて、いつまで経っても守られてばかりで、自分で自分が嫌になる。
    「雄二、ケガさせてごめん……。いつも俺、守られてばっかりじゃねぇか……」
    「涼太のせいじゃないだろ」
    「あの時、俺が無茶なことしなければ、雄二はケガしなかったかもしれないだろ!?」
     ヒーローに……雄二に助けられることを、当たり前だと思いたくなかった。         
    「これが俺に与えられた使命なんだ。ケガは、しばらくしたら治るさ」
    「それじゃあ、あんたを守るヤツがいねぇじゃねぇか!! 俺だって、大好きなあんたのこと守りたいんだよ!!」
    「大好き……?」
     雄二がポカンと呆けているのを見て、俺は自分がとんでもないことを言ってしまったことに気づく。
     雄二に対して、良くない態度をとっていた自覚がある。嫌われてはいないにしても、恋愛感情的な意味で好かれていないだろう。
     だから、好きだと言う気持ちを伝えるつもりなど、全く無かった。
    「っ……! あ……」
     なんとか誤魔化そうとした瞬間、雄二が静かに口を開いた。
    「涼太。俺がヒーローになろうと思ったきっかけ、教えてやろうか」
    「え……?」
    「涼太が小さい頃、組織の幹部に襲われかけたことがあっただろう?」
    「ああ」
     忘れるはずはない。まさにその時、俺は『正義のヒーロー・レッド』に恋をしたのだ。
    「その少し前、『君にはヒーローとしての素質がある。その力で世界を救ってくれないか』と、俺たちのボスからお願いされていたんだ。だけど、そんな訳わからない素質だの力だの言われても、素直に受け入れることなんてできなかった」
     そりゃそうだ。俺が雄二の立場だったら、『ふざけんな!』で抵抗して終わりだろう。
    「そんな時、涼太が危ない目に遭っていた。涼太を守れる力があるのに、それを使わないでいることはできなかった。涼太を守るためなら、俺はなんだってしてやる。そう思って、このヒーローの使命を受け入れたんだ」
    「そうだったのか……」
     俺と過ごす時間が減ったのは、ヒーローとしての役目があったから。
     今となっては、仕方がなかったことだと理解できる。
    「大好きな涼太を、危ない目には遭わせたくない。そう思って、俺は今までヒーロー・レッドとしてやってこれたんだ」
    「ううっ、雄二兄ちゃん……っ!! 俺、雄二兄ちゃんのこと、好き! 大好き!!」
    「俺も、涼太が大好きだよ」
     俺は雄二に思いきり抱きついた。
     雄二の身体が逞しいから、抱き締めるというよりは、しがみついている感じになってしまうのが悔しい。
     張り出している胸筋に顔を埋めて、俺は決意を新たにした。
    「俺にも、雄二兄ちゃんを守らせてくれよ!」
    「『ヒーロー・レッド』には四人の仲間たちがいるが、『上井雄二』は涼太が守ってくれるか?」
    「ああ!」
    「ははは、心強いな」

     こうして俺の初恋は実り、充実した日々が始まるのだった。
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