或る桜日和のできごと 任務からの帰宅。家の扉を開けたら、恋人が準備万端の格好で俺を出迎えた。何の準備かというと、多分ピクニック。薄手のマウンテンパーカーを羽織った恋人は、レジャーシートを脇に抱え、水筒と小さなビニール製のピクニックバッグを携えている。
「おかえり、行」「ちょっと待ってください」
続きを紡ごうとする口を言葉で止める。
「手洗いと、服だけ変えさせて」
まあいいだろう、と言わんばかりに大きく首を縦に振った恋人を視界から外して部屋に上がる。洗面所で手洗いを済ませたら、任務服を脱ぎ捨て、恋人と色違いのマウンテンパーカーを手に取った。それからもう一枚大きめのアウターを掴んで玄関へと戻る。
突拍子も無い行動だが、この人がこうと決めて動くことにはあまり間違いがない。自分では思いもつかないことをやってのけるから、新しい刺激をたくさん貰っているのは否めない。だから、最近では大人しく彼の「思いつき」に乗っかることにしている。
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