愛に気づいてください彼女を愛していた。心の底から愛していた。
この先、一生を共にする覚悟だってできていた。
それは彼女も同じだと思っていた。
あの時、二人は正式に結ばれるはずだったのだ。
『おぬしと婚約すると完全に決めたわけではないぞ』
『つばめよ、修行しなおしてこい』
どうしてこうなってしまったのだろう―
友引にひっそりと佇む洋館。その寝室に男が一人。尾津乃つばめは、まるで生気を失ったかのように無気力に横たわっていた。
とある日のディスコでの出来事。彼は愛する彼女であるサクラとの婚約を認めてもらうため、その伯父である錯乱坊に霊能力の腕を披露する予定であった。彼女のために西洋へ留学し修行も積んできた。ここで華麗に術を披露し、婚約を成立させる。はずだった。
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