ever 石くれの下で与一は眠っている。
横向きにまるまった姿がまるで胎児のようだと、そんなことを考えた自分にちいさく舌打ちする。
コンクリートの床よりもずっと白い、その横顔をしばらく眺めた。
伸びたきりの髪もシャツの袖からのぞく痩せた手首も、記憶にあるものと寸分変わらない。
細いその肩に、与一は世界のはじまりを担ったままいつまでもおろさずにいる。
伏せられた睫毛がかすかに震えた。
のばしかけた手を、けれどもそのままおろす。拳を握りこめば爪が刺さったかちりりと痛んだ。生きてもいないのにおかしなことだとひとごとのように感心した。
灯もないのに部屋はあかるい。三方の壁はほぼ朽ちているというのに、ただ一面ばかり、重厚な鉄扉がはめこまれている。
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