女装ネタinシスターセルゲイ課長は重々しい空気の中、ため息混じりの言葉が綴られる。近年、教会に不審の男が出入りしシスターや子供を襲うと行った下劣な思考の人間が多発している。どんなに警戒しても男は現れ、特に女性を狙った犯行が多く困り果てているそうで、今回、警察にも謎を究明して欲しく支援課に依頼が来たのだとか…
「それで犯行時間などは一定なのですか?」
「それがバラバラだと報告書に記載されている。これと言って目星の付く内容も無く教会側も早く原因と事件を解決して欲しいとの通達だ」
「へぇ、あの教会も頭を抱えるとはね。んで?俺たちはどうすりゃ良いんだ?」
「取り敢えずはクロスベルの教会を当たれ。あそこも先日襲われたばかりだとか」
「キーアちゃんも早く日曜学校に行きたいって言ってるし私達に出来る事をしましょう」
「そうですね。キーアの笑顔の為に、その下劣な犯人を早く逮捕しましょう」
支援課一同は手始めに教会に出向く。近辺調査と警戒する場所などを割り出す為に各地で情報を集めて昼頃…一度休憩を取ろうとカフェに集まる。
「これと言って無いですね。情報」
「あぁ…少しは分かると思ったけど…これは流石に無さすぎて逆に怪しい」
「被害者達の証言もバラバラだしなー。」
「そこが謎なのよね…大男だったり、中年中肉だったり…犯人像があやふやで絞るのは困難だし…」
皆で深いため息を零し肩を竦めているとエステル達と偶然出会う。おーい!と大きな声を上げ手を振るエステル
「どうしたの?!そんな皆して暗い顔して!」
「実は…」
「あー…その話か。こっちも色々と調べてるんだけど分からない事だらけで頭がパンクしちゃうのよね。何度か張り込みもしてみたんだけど全然現れないし」
「そっちの方でも進み具合は五分五分なのか…うーん今回ばかりはお手上げか?」
「…いや…まだ試してない事はあるんだけど…」
ロイドは唸りながらもポツリと名案を放つ
「てんでバラバラな証言で犯人を見つけるのは困難。ならば実際に会って現行犯逮捕すればいい。だけど張り込みをしてもダメなら…変装して犯人と会うというのは…でもコレは危険な事だし女性に一人で居させるのも」
「大丈夫よロイド!私ならやれるわ!」
「私だって!」
息巻くエリィとエステルだが
「もし犯人が幽霊とかの類いだったらお嬢達にはちと無理かもな」
「あう…」
「ならば私が」
「ティオ助、流石に日曜学校に行く年頃ではないから無理だとゴホッ?!」
「ランディさん…私はシスター枠として候補したのですが???え?その口を塞いであげましょうか??」
「ギブ!ギブだから!」
「えー…コホン。皆落ち着いて。この案を出した俺が囮になるから」
「…え?」
「ロイドさんが…」
「シスター…」
一同がロイドが恥ずかしがりながらシスター服に身を包まれた姿を想像する。可憐で栗色の髪が黒とよく映えて可愛い姿が目に浮かび微笑ましくなる。本人は生暖かい目線に気付き赤くなっているが、どうにか皆を纏め上げて一同は教会へと戻る。
「ど、どうしてエステル達も来てるんだ?」
「だってロイド君のシスター姿見たいし。ねーヨシュア」
「ごめんね。エステルがこう言うと言う事聞かないから」
「何ならヨシュアもシスター服着ても良いんだよ?」
「や、やめておく」
二人がキャキャとしてる合間に苦笑いをしつつ神父達に事情を話して服を調達する。
「おお〜!」
想像していた以上に似合うロイドのシスター姿に皆は目を輝かせている。
そしていつの間にかランディも神父服に着替えており首を傾げていると
「ロイドに危ない目には合わせられねぇからな。これなら遠くでも近くでも不自然じゃねぇだろ?」
ウインクを決めてロイドの心をガッツリ掴み、抜け駆けは許さないと結局、皆シスター服を着てしまう羽目に…
「これじゃ俺が女装した意味は…」
「ロイド…諦めよう」
ヨシュアもエステルの力により女装させられており慰め合う二人を他所に女性群は力強く犯人逮捕に陣を組み結団力を高めていた。
そんな囮調査も3日を経ち一向に犯人は出ず…シスター服姿にも慣れたロイドは頼まれた掃除を片付ける為に一人、庭に出る
(こうも平和だと犯人はもう別の所に行ってしまったのだろうか?)
箒を持って掃き掃除をしながら考えに耽っていると不意に眩暈が来る。
(あれ…?)
身体が強張り、身動きが取れない…
「何だ…これ…」
はぁ…はぁ…と男性の様な低い声が後ろから聞こえ、背筋がゾワゾワと寒気が襲う。
「可愛いね…シスター様…」
「ひっ…!」
いつの間にか背後に居たのか、離れたくても身体の言う事が聞かず声も出ずに何が起こっているのか整理も付かずにパニックにならないように思考を研ぎ澄ます
男の手はぬるりと肩に掛け、もう片方はスカート中へと這う。嫌だ…誰か…誰か助けて…!
「ロイド!!伏せろ!」
聞き覚えのある声に先程の金縛りが解け、指示の通りに頭を伏せる。ドコッ…と鈍い音を立て地面に打つかる音と共にランディの方を見遣ると武器を構えて自分を守っている。
犯人を見ると人間の様な模倣をしているがアレはどう見ても魔獣…魔獣なのかさえも疑う程に見た事ない種でもあった。
「武器は持ってるか?!」
「あ、あぁ!一応、スカートの中に…て無い!」
「ひひ…これ…探してる?」
魔獣の様なモノが隠し持っていたトンファーをぶら下げてニタニタと笑っていた。
「コレも…君の…大事なモノ」
「あっ…!!俺のパンツ!」
「このエロ魔獣!俺の大事なロイドのパンツを!」
魔獣?との戦闘が開始され、攻撃出来ないがランディの的確な指示と詠唱でサポートをしつつ、どうにか仲間に応援を呼びかけ、その時間稼ぎにアーツをぶつけようと詠唱に集中する。
「ランディ!もう少し時間を稼いでくれ!」
「おう!任せろ!絶対にパンツは返してもらう!」
「そうじゃない!!パンツから一旦離れろ!」
その時、後ろに張っていた物に気づかずに足元を取られる。気が付いた時には遅く、宙ぶらりんに吊るされ人質扱いとなってしまった。
「クソっ…離せ!」
「ロイド!」
「可愛いシスター様…僕の…お嫁さんに…っ!?」
銃声が鳴り魔獣が怯む。
「ロイドに手を出すなんて100年早いわよ!」
「お嫁さんになんて、そうはさせません!!」
「エリィ!ティオ!」
「遅くなったわね!ロイド君!」
「ランディさん、一緒に叩きます!」
「助かった!まずはロイドを救出しねぇと!」
エリィとティオの後方からの援護射撃に前線で戦うランディ、ヨシュア、エステルの攻撃に漸く魔獣が怯み始めロイドに絡みついていた触手が力を無くしロイドは地面目掛けて落ちる寸前でランディがロイドをお姫様抱っこする形となって救出。
遠慮が無くなった皆はギロリと魔獣を睨みつけ鳴り止まぬ攻撃に遂に倒されたのだった。
「僕の…およめ…さ…ん」バタン…
「ふぅ…何とかなったわね!」
「大丈夫か?ロイド」
「う、うん…ありがとうランディ」
こうして一先ず犯人?を退治しひと段落が着き改めて新情報を整理する。
「あれは一種の催眠効果があったのは確かだ。そして変形する事も上げて形姿バラバラだったのは真似た人間が近くに居たから…と思うんだけど…」
「ほう…偶に新種だったり何処からか連れ込まれた魔獣が逃げて暴れるっていうのもあったが…まさか人間に擬態するとは思わなかったぜ」
「バラバラだった証言と知らずか催眠に陥って記憶が曖昧だったのも理解出来るわ」
「それにしてもロイド君を助け出す姿は王子様って感じで凄くカッコよかったわ〜ああいうのに憧れちゃう」
「あう…で、でもランディ…あの時は本当にありがとう…もしランディが居なかったら俺…」
「いーって。ロイドが怪我が無くて良かったぜ」
「うん…で、俺のパンツ。早く返してくれないか?」
「さぁて〜?何の事やら」
「とぼけるな!見てたぞ!ポケットに隠したの!」
「ああいうのが憧れる…って?」
「あはは〜やっぱそうなるよねぇ〜」
「返せ!!」
「やだ!!」
事件は無事に解決し、その後も事件が起こる事も無く無事に平和に戻った。
end