『大切にもさせてくれないの?』薄暗い廊下を歩き、ドアの隙間から一筋の光が漏れているのを見てディックは短い溜息を付く。足音を立てずドアに近付きノブを掴みガチャリと音を立てて回した。
ドアを開けると、ベッドに腰掛け傍らの木材テーブルに置かれたランタンの光を頼りに慣れた手つきで二の腕に包帯を巻くトムの姿があった。
トムはぴたりと手を止め、顔を上げて此方に視線を向けた。その目はまるで悪戯がばれて怯えながら叱られるのを待つ子供のようだった。
そんなトムにお構い無しに大股で近付き、拳1つ分の距離にまで来て無言で見下ろす。
頭から爪先まですっぽりとディックの影に覆われトムは恐る恐る顔を上げた。
見下ろしたまま1つも表情を変えないディックに不安を抱えながら顔色を伺うように覗き込む。だがそれでも表情を読み取れず益々不安を加速させるだけだった。
1343