日が暮れて、窓の外を行き交う車や登った月から隠れるようにベランダにつながる窓のカーテンを、中心に向かってレールの音を立てて閉める。今日も一日終わったとダイニングテーブルに腰を落ち着ければ、ジャンはリビングのソファに座る彼のある一点を見つめつつ、ふと声をかけた。
「リヴァイさん、やっぱりリップクリーム塗ったらどうですか」
「…必要ないと何度も言っているだろ」
テレビの天気予報に目を向けながら断固として首を縦に振ろうとしない恋人の横顔に、ジャンはため息と共に頬杖をつく。
テレビからは明日の最高気温も10℃を下回ると告げられていた。
冬はコートを着てもマフラーを巻いてもヒヤリとした空気が容赦無く体に寒い寒いと悲鳴をあげさせる。ポケットや手袋から出した手は悴むし、朝の布団で暖まった体もその温さを留めたいと布団から出ることを拒否しがちだ。
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