Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    niichiga222

    @niichiga222

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 20

    niichiga222

    ☆quiet follow

    め…めのしがまたやってくれたぞ……!!?!!!やってくれたぞーーー!!!!!!!!!!わたくしは珠Bオンリーみたいなタイトルじゃねーの…(跡部様)と思いました 珠とBの前日譚(何の?)です!!!

    【タマトリバチ】都内某ホテル2階ラウンジ。珠はそこにいた。
    カウンター席で時間までの暇つぶしにと、赤ワインを注文したところだった。すっと男が現れ、空いたカウンター席で珠の隣に腰掛けた。男はスーツ姿で一見ただのサラリーマンだが、年の頃に似合わない高価な時計やブランドの鞄を持つあたりタダのサラリーマンでなさそうだ。
    「待たせたかな」
    「いえ、私が早く着きすぎました。お気になさらず。……“鳥の羽”ですね?」
    珠は合い言葉を告げ、相手を確認した。かなりの大男だ。一般人のいるホテルで帯刀は目立ちすぎるので、刀はカウンターの下に立てかけている。ここでこの男に人目を憚らず捕まれば、珠に抵抗の余地はないだろう。
    「鳥羽組のもんだ。お前のとこのボスは相変わらずか」
    「ええ。ボスはそちらを信頼していますので、こうして私がご挨拶に伺ったのです」
    「ふ、そうか」
    男は笑って、珠が差し出した契約書に目を通した。嬢の組織で購入した武具の購入権利と守秘義務の契約だ。
    「これを俺らが守るとでも?」
    「“信頼”していますので」
    珠は強く言い切った。男は懐に手をいれ、内ポケットから小さな袋を取り出した。中にはカラフルな錠剤が3粒入っている。
    「……どういうことですか。何のおつもりで?」
    珠は中身をチラリと確認すると、緊張感を持って聞いた。珠は本物のクスリを見るのは初めてだったが、見ればすぐにわかった。男は不気味に笑って言った。
    「これの取引は含まれてないのか」
    男は袋の上からクスリを指でつつく。
    「えぇ。含まれていません。……このお話はボスとされていますよね?」
    珠は嬢との会話を思い出した。前回嬢が鳥羽組と会合した際にもこの話題は上がったらしい。とはいえ、ウチにそのようなルートはないし、1つの組織のために扱うつもりもない、と断った旨を聞いていた。そして、嬢はこの話を伝えるときに「また契約時に持ちかけるかもしれないが、とりあうな」とも言った。珠としても、この話に乗るわけにはいかないのであった。
    「そうか、残念だな……」
    この言葉と共に、珠の腹部に銃口が当てられた。テーブル席の客には、珠のジャケットがジャマして見えないのだろう。珠は下唇を噛んで、男を睨んだ。
    「どういうおつもりですか。ここで撃てば貴方も逃げられませんよ」
    珠の中で最大限冷静に言った。裏腹に男は笑った。
    「どうかな、ここに何人ウチの組のもんがいると思う?」
    珠は周囲に客が増えたことにハッと気づいた。警戒が欠けていた点、珠は自分の至らなさに奥歯を噛み締めた。珠にも護衛のため数人の構成員がいたが、席は遠い。契約成立のために「組が不審がられている」という不都合は隠さなければならないからだった。今回はそれが裏目に出た。
    「撃つ必要が感じられません」
    「交渉決裂が理由だ。それとも命乞いか?悪いがお前の利用価値は体くらいしかねぇし、それじゃ足りん。俺らはお前を生かしちゃおけねぇんだ」
    珠はどうにか注意を他のものに引けないか、男と目を合わせたまま考えていた。刀を取るだけの時間があればいい。突発的な何かがあれば。
    刹那、視界の端から黒い影が伸びてきた。その影は瞬く間に銃を蹴り上げて、そのまま男の脇腹を蹴り飛ばして椅子から落とした。
    「うるせぇよ、酒が不味くなる」
    影の正体であるスーツの女が不機嫌にそう言った。
    男はうが、と唸り床に伸びた。この様子に気づいた周りの客は悲鳴を上げて逃げ出し、ホテルは騒然とした。組の仲間が周囲に増えたというのは、男のハッタリだったのだ。
    「アンタ大丈夫?」
    振り返った女が珠と目を合わせた。女のセミロングの髪がふわりと揺れる。緑の2本のメッシュが目立つ前髪の隙間から、右目とは異なる色の瞳が珠を見つめていた。その姿につい息を飲んで、珠は言葉を発しなかった。すると、女は珠の座っているカウンター席をチラリと確認した。
    「なんだ、おねーさんもそんなにいい人じゃなさそうだね」
    女はふっとイタズラっぽく笑った。珠は急に今までのことが恥ずかしくなり、声を上げた。
    「な、なにを言う!これしき1人で……私は失礼する!」
    手早く荷物をまとめて珠は席を立った。そして脇目も振らず出口へ直進した。そのあとを数人の護衛が追って出ていった。女は首を傾げて立ち尽くしていた。ホテルの警備が駆け込んできたのはこの頃だった。絡まれていた女の子を助けるつもりで来たが、銃を持っていたので咄嗟に蹴飛ばしたと説明して、女は男が運ばれるのを見届けた。
    「なんだったんだったく……こっちも仕事の途中だったのを助けにいったのによ」
    女はブツブツと文句を言って、もとのカウンター席に置いたままの自分の荷物を取り、ウィスキーの代金をコースターに挟むとホテルを出た。荷物の1つである箱には「萬研社研究所 スズ宛」と書かれている。それを路上駐車していた自車の助手席に置くと、女は車を発進させた。
    医師である知人の荷物配達が、今の女の仕事だ。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    niichiga222

    INFO珠の過去編です…早すぎるって!!!!すげ〜〜よ…
    【艱難、汝を珠にす】望まれない生だったのかもしれない。十数年の人生で、繰り返し繰り返しそのことについて考えていた。
    生家は都心近郊のアパートの一室で、物心つく頃には父親のいない所謂片親だった。唯一の肉親である母親は夜遅くまで仕事と言い、帰ってくるのは決まって21時を回っていた。その頃、私は食事入浴を済ませていつも寝ていた。食費は月末頃に、1,000円札が数枚に幾つかの硬貨が玄関のがま口に知らぬ間に入っているのだ。なんとか節約しても、がま口に1,000円札を残しておくと、「金あるじゃん」と言って支給額が2000円ほど減る。だから、私は節約したお金はランドセルの中に仕舞い込んで隠すようになっていた。齢6つの時に見付けた、なんとか生き抜く術だった。こうしてなんとか胃に食べ物を入れ、言いつけ通り5分での入浴を済ましてから20時には空腹を誤魔化すように寝入っていた。しかし、入眠するも束の間、機嫌の悪い母親は寝ている私の体を蹴って起こしてきた。酒の匂いがする母親はいつも激昂していて、なんでできないんだ、出ていってやる、はやく死んでしまえ、などと泣きながら叫んでいた。私はこの時間が早く過ぎるように、ただうずくまってごめんなさい、と繰り返すしかなかった。これが1番収まりが早いのだ。泣き疲れて壁に持たれかかりしゃがんだ母親はいつも寂しそうで、壊れそうで、その母親を見るのが1番辛かった。そして、部屋の隅でうずくまる私も、気づいたらうとうととしてそのまま朝を迎えることも少なくなかった。朝、目覚めると母の姿はなくて、体には布団が掛けられていた。母のことは好きだった。年端のいかぬ子に、母親の善悪についてわかることではなかったし、なにより時折触れる優しさがいつも嬉しかった。
    9171

    recommended works