熟れる果実(邑マス)「何故、構内で焚き火が…」
山のように集められた落ち葉が燃え、もくもくと煙を上げている。煙の臭いにつられて学科棟裏にやってきたマスターが見たのは、焚き火の前に座り込む邑田の姿だった。
「おお、ますたぁ。焼き芋の匂いにつられてやって来たかえ」
「いや、どっちかと言うと煙の臭いに…」
焼き芋やってるんだ、学校で。という言葉はなんとか飲み込んだ。
マスターは邑田の隣に立ち、木の棒で時折落ち葉の中をつつく邑田を見下ろした。珍しく在坂の姿はない。
「在坂は訓練中でのう。戻った在坂に焼き立てを食べさせてやろうかとな」
「気持ちは分かるけど…教官にバレたらまた懲罰房行きになるよ」
「その時は懲罰房で食うだけのこと」
邑田はマスターを見ないまま、いつもの様に笑みを浮かべ事も無げにそう言った。
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