思い出の1つ「高木刑事!このアトラクションに乗ろうよ!」
「高木刑事!うなじゅうはないのか?」
「元太くん!ここにあるわけないでしょう!」
「まあまあおまえら落ち着けって…。」
ここは外国人もよく来る観光地近くにある遊園地。昔の感じを残しながら今風のアトラクションが作られたりしている。僕も小さいころ家族と行ったことがある。僕はその遊園地に今日、哀ちゃん以外の少年探偵団の皆で来ている。僕は元気いっぱいのこの子達を見ながらジュースを飲んでいる。
★★
3日前。
千葉と事件の調査を終え、警視庁に戻る前にコンビニに寄って夜ご飯を買っていた。今日は警視庁に戻って資料を少し作ったらあがれる。最近寝不足が続いている。とても眠い。そう思いつつ、コンビニで買い物をして車に戻ろうとすると、見覚えのある車が駐車場に停まった。
「博士大丈夫?」
「俺らで色々買ってくるから…。」
「すまんのう…。」
車からコナンくんと哀ちゃんが出てくる。運転席に座っている阿笠さんはいつもより元気がなく体調があまりよくないようだ。
「あっコナンくんと哀ちゃん。」
「高木刑事!ご飯買ったの?」
「うん。今千葉と警視庁戻る前にね…阿笠さんあまり体調良くないように見えるけど…。」
「風邪ひいて病院行ってきたの。その帰り。」
「最近発明つくるために夜遅くまで起きてたから…疲れが出たんだろうって。」
阿笠さんはいつも様々な発明を作っているすごい人だ。その発明のおかげで僕たちも何度助けられたりしたか…。今回は無理をしてしまったのか体調を崩してしまったようだ。僕は2人と一緒に必要なものを探して少しお金を出してあげた。荷物が多くなったため一緒に車まで運ぶ。
「あれ高木刑事…ゲホゲホ。」
「大丈夫ですか?体お大事にしてくださいね。」
「そうじゃな。早く治さなきゃ…あの子達がすごく楽しみにしている遊園地に連れて行くことが出来ないからのう…。ゲホゲホ…。」
「博士無理すんなって。」
「あの子達には私たちから言うから…。」
「遊園地??」
「休園している遊園地が今度リニューアルして開園することになったからそれに行く予定だったんだけど…。」
「博士があの調子じゃ無理だし、諦めるしかないわね。」
「それはいつなんだい?」
「えっと3日後!」
3日後…僕は何も起こらなければ非番だ。僕が阿笠さんの代わりに一緒に行ってもいいかもしれない。佐藤さんが非番一緒だったらどこか出かけるか計画を立ててたが、残念ながら今回は被っていない。……よし!
「もし僕でよければ阿笠さんの代わりに僕が連れて行こうか?」
「えっ?」
「その日非番なんだけど特に予定ないし…みんなにはいつもいろいろお世話になっているからね。」
「い、いいんですか?」
「大丈夫ですよ。…前日に何も起こらなければですが…。」
「でもどっちにしろ私は行けないわ。博士の看病しなきゃだし。」
「哀くんも別に言っていいんじゃよ?」
「博士を1人にする訳にはいかないわ。遊園地なんて興味ないし。」
「ってことで4人でお願いしていい?」
コナンくん、歩美ちゃん、元太くん、光彦くん。そして僕。哀ちゃんが一緒に行くことが出来ないのは残念だが、阿笠さんの看病をお願いしよう。なら3日後のことを聞かないといけない。
「そしたらコナンくん、その日の予定とかあとで教えてもらってもいいかい?」
「うん分かった…あとでラインで送るね。高木刑事ありがとう。あいつらもすごく喜んでくれると思う。」
「じゃあそろそろ行くね。阿笠さん事故に気をつけてくださいね。」
3人とコンビニで別れて警視庁に戻る。一応目暮警部にはさっきのことを伝えておいた。そしたら出来る限り何かあったら僕以外の人に回してくれることになった。その配慮をしてくれるのは大変ありがたい。
佐藤さんもどこからか話を聞いたのか、資料作成など手伝ってくれた。…お土産を買ってくるのを条件に。そんなことしなくても佐藤さんには別に買ってくるのにと思いつつ、手伝ってくれるのはとても嬉しいし助かるので甘えることにした。
そして無事に当日非番を過ごせそうだ。
★★
朝起きて支度をし、車で阿笠さんの家まで向かい、皆と集合した。車を運転ししばらくして遊園地に着く。入場券を購入し中に入る。
「皆最初はどれに乗るか決まっているかい?」
「もちろんジェットコースター!!」
「このジェットコースターは日本で一番古いらしいですよ!」
「そうなのか!じゃあ早速行こうぜ!!」
「えっとジェットコースターは…ここだよ高木刑事。」
コナンくんが遊園地のマップを調べてくれてそこに行く。今日はリニューアル開園日のためお客さんはたくさんいた。ジェットコースターはすごく人気のためすぐに長蛇の列が出来ていた。が、早く並んだため30分ほどで自分たちの番が来た。皆のキラキラをした表情がなんとなく懐かしい。僕も昔ジェットコースターに乗る時は楽しみで仕方なかった。…少しスピードが早くてびっくりしたが。さて僕は遠くから見てようかな…と思っていると歩美ちゃんが声をかけてくれた。
「元太くんは1人で乗るみたいだから、高木刑事一緒に乗ろう!」
「えっ!?」
「せっかく遊園地に来ているんだよ?楽しもうよ!」
「もしかして…佐藤刑事がいないからつまんないとか思っているんですか?」
「そっそんなことないよ!今日は佐藤さんはお仕事だし…!」
「じゃあ乗ろう!」
歩美ちゃんに手を握られて僕はジェットコースターに乗る。少し窮屈ではあるが、安全バーを閉めて動き始める。久しぶりに乗ると言うワクワクと緊張…それを感じるのも久しぶりだ。そして…僕は叫んだ。
★★
「高木刑事隣ですごく叫んでたね!」
「あまり聞かないから新鮮だな!」
「でも大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫…ちょっと久しぶりだったからこんな感覚だったっけって思っちゃって…。」
もっと大きい遊園地のジェットコースターでないだけまだマシだ。体が浮くような感じが慣れない。そして短いおかげでなんとか助かったと思う。でも少年探偵団のみんなは楽しめたようだ。
★★
それから垂直落下するアトラクションやお化け屋敷、気になるアトラクション出来る限りたくさん乗れるように順番を決めながら園内を歩いて楽しんだ。たくさんアトラクションに乗れた結果、夢中になってお昼の時間を少し過ぎてしまった。ご飯を食べようと思っていると、近くにお土産屋さんがあった。
「おい!先にお土産見ようぜ!」
「ここにしかお土産は売ってないみたい。行こうよ!」
「そうですね!博士と灰原さんに買わないと!」
「ちょっと!?」
「あーあ行っちゃった。」
僕はコナンくんと共に置いてかれる。コナンくんももう諦めた顔をしてお土産屋さんに向かっている。まあ確かにまたここに行くのは大変だし、最悪僕が先に車に荷物を置いていってあげよう。
「高木刑事ごめんね…せっかく付き添いしてもらってるのに。」
「いいんだよ。それに僕も佐藤さんにお土産頼まれているから。」
お土産屋さんに入ると、遊園地のマスコットキャラクターのグッズやお菓子のお土産、外国人向けの日本のデザインがされたグッズなどが売られている。子供達は哀ちゃんと博士の分を買いに探しているだろう。僕は目暮警部などにあげるお菓子のお土産と佐藤さんだけにあげる何かキーホルダーでも買おう。お菓子のお土産は比較的すぐに見つけることが出来た。クッキーなら皆食べやすいだろう。問題は……。
「うーん…佐藤さんには少し子供っぽいかな…でもこれぐらいしか良い物がない…。」
お店の中では一番大人しめの遊園地のマスコットキャラクターのキーホルダー。迷いに迷ってそのキーホルダーにし、レジでお土産を買う。そしてお土産屋さんの出口で少年探偵団の皆を待っていた。
「2人にお土産は買えたかい?」
「うん!博士と哀ちゃんの分買えたね!」
「喜んでくれるといいですね!」
「俺らが選んだんだから喜ぶに決まってるぜ!」
「そしたら一旦僕が車に荷物を置いてくるから、ここで待っててくれるかい?」
「「「はーい。」」」
荷物を預かり車に向かう。皆をここに連れてきてよかった。本当は哀ちゃんと阿笠さんと一緒に遊びたかっただろう。それに僕もいつかここに佐藤さんを行きたい。2人きりで誰にも邪魔されずに。そう思いながら車にお土産を置き、車の鍵をしっかり閉めて戻る。コナンくんから先にフードコートにいることを連絡してくれたため、フードコートに向かう。
★★
フードコートについて少年探偵団の皆と無事に合流し、席をとって各々食べたいものを購入する。僕はメニューを見て惹かれたハンバーガーのセットを購入した。そして皆といただきますをして昼ごはんを食べる。
「そういえばなんでここに行きたいと思ったんだい?」
「動画サイトで面白い動画を見たんです。」
「面白い動画?」
「クマのぬいぐるみがアトラクションに乗っているんだよ!」
「なかなかシュールだぞ!」
「えっとね…これだよ。」
コナンくんのスマホ画面に映るクマのぬいぐるみの動画。確かにさっき乗ったジェットコースターやお化け屋敷、ぐるぐる回転するアトラクションにも片足を浮かせながら乗っている。確かに可愛くも見えるしシュールな絵面でもある。もしかしてこれ全てもアトラクションの動画があるのだろうか。佐藤さんにも見せようと調べて佐藤さんのラインにリンクを載せて送る。佐藤さんは仕事中だろうが…見た時の反応が楽しみだ。
「このあとはどうしたい?」
「えっとこのぐるぐるしてるアトラクション乗りたい!」
「僕はこのゆっくりしているやつがいいです!」
「俺はそれより屋台とか見たいぜ…。」
「うーん僕は皆に合わせるよ。」
「なら地図を見てどうまわるかまた話し合おうか。」
皆とのこのような話し合いはとても楽しい。遊園地制覇後半戦が始まる。
★★
もうすっかり夕暮れ。遊び疲れて寝ている皆を阿笠さんの家まで送る。哀ちゃんと阿笠さんにお土産を今日渡すことにしたらしく、阿笠さんの家で解散することになった。無事家の前に着くと、皆を起こす。
「起きて。阿笠さんの家についたよ。」
「あっもう着いたんだ…。」
「眠い…。」
「うな重…。」
元太くんは夢でうな重を食べているのだろうか。元太くん以外のは起きた。美味しそうな夢を見ている中、起こすのは申し訳ないけど、少し体を揺らして起こした。
「忘れ物ないようにね。最後確認してくれるかい?」
「高木刑事!大丈夫だよ!!もし忘れものあったとしても取りに行くよ。」
コナンくんと車の後ろに載せていたお土産を下ろし、確認をする。僕が買ったお土産はさっきまで少年探偵団の皆が寝ていたところに移動させる。
「じゃあそしたら僕はそろそろ先に行くね。楽しめた?」
「「「楽しかったー!!」」」
「よかった。」
「あっ待って!」
「高木刑事!」
「これどうぞ!」
そう言われて僕の手に遊園地で売っていたボールペンとコップを渡される。
「「「今日はありがとう!高木刑事!!!」」」
「高木刑事のおかげで遊園地に行けてよかったよ。本当にありがとう。」
そう言われるのはとても嬉しい。僕はただ遊園地に連れて行ってあげただけなんだけどね。皆とても良い子たちだ。
「ううんいいんだよ。僕も楽しかったし。じゃあまたね。」
そう言って僕は車に乗り家に帰る。いつもなら事件に巻き込まれて楽しい時間が途中で終わったりすることが多い。特に少年探偵団はいつも事件現場にいて…。そんな中、1日事件に巻き込まれずにすごく楽しめる思い出を作れて無事によかった。よし、佐藤さんに明日お土産を渡そう。
そして皆から貰ったものを自慢しよう。