追伸。 立て付けの悪い雨戸をどうにかして開けると、縁側に面した部屋の奥の方まで光が差し込み、古びた畳の上できらきらと埃が舞うのが見えた。
開け放った窓の外の空気が妙に美味く感じられるのは、この家が長い間閉じられていた証だろう。更に言うなら、大通りから奥に入った場所にある立地と、この辺りでも珍しくなった、木と草が生い茂る広い庭も味をよくしている。
まず、この庭は間違いなく業者に手入れしてもらわないといけない、と霧島は窓にもたれながら思った。木を剪定して草を刈り、元の姿に戻ったらなかなか風情がある姿になるに違いない。そうすれば、ひとつの目玉になる。
庭もそれなりなら室内もそれなりのものだ。
窓を開けるまでは判らなかったが、質素ながら味わいのある欄間に床の間、縁側に設けられた雪見障子、部屋と廊下を仕切るのは色褪せてはいるが立派な襖だ。畳は変える必要があるだろうが、あとは徹底的に掃除をすれば、人の観賞に十分耐えれるものになるだろう。
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