「なあその写真って、どうしてるんだ?」
パシャ、パシャと鳴るシャッター音を聞きながらダンデは問いかけた。プライベート用スマホの向こう側には、にこにこと笑う恋人がいる。
「別にどうもしないよ?オレさまが見るだけ。
…あ、もしかしていい加減嫌だった?ごめんそれなら…」
「違うぜ、嫌なわけじゃないが…」
ひとつ、疑問に思うことがあった。
恋人になってから数年経ったというものの、キバナは相変わらず時折オレを撮る。彼は恋人という関係をもつ前からも自撮り、仲間やポケモンたちとのオフショットなど、ことある事に写真として残しSNSにアップしていることは知っていた。オフの自分を撮る習慣もまた、その趣味の延長であると思っていたのだが。そこには決定的な違いがあった。
「オレの写真、ポケスタには載せないのは何か理由があるのか?」
「え、あー…ってか、分かってたんだ?ダンデあんまりSNS見てないと思ってた」
「キミも含めて、ジムリーダーやマサルくんたちのアカウントはたまに覗いてるんだぜ」
「なるほどね…」
頻繁に撮っているにも関わらず、キバナのポケスタにいるオレはキャンプ時以外のオフ姿などは見当たらず。
「ん〜…じゃあとりあえず、このスマホのフォルダ一緒にみてみる?」
「いいのか?」
「もちろん。ダンデ撮っていいとは言うけど見てこようとしなかったし、いい機会だろ」
キバナは写真のフォルダをひらいた。中身は月別に分けられたシンプルなものだったが、かなりの枚数がある。小さくてよくわからないが、画面が一面紫色になっている。
「これ…もしかして全部オレなのか?」
「うん、ついポケモンたち撮ったりスクショしたりもあるけど、基本的には」
「すごいな、何だかヘンな気分だぜ」
「最近のお気に入りはぁ…これかな」
表示されたのは、寝起きのくしゃくしゃ顔でキバナの腰に抱きついている自分の姿。これは寝室で撮った写真だろうか。
「!?滅茶苦茶カッコ悪いじゃないか」
「え?めっちゃカワイイけど」
ほらこれも〜、と次に表示されたのは風呂上がりの姿。眠たそうにしているのはキバナのドライヤー後だからだろう。
「!?!?か、顔がふにゃふにゃだぜ…!締まりがなさすぎる!」
「ほんっとカワイーよな」
「ま、まさかどの写真もだらしないオレなのか…」
「だらしなくなんかないだろ。いやそれは嘘か…緩んだカオも愛おしいよな〜♡」
正直1番緩いのは、でろでろにとろけた今のキバナの顔であると言いたいくらいだが、画面の中の自分も負けず劣らずゆるゆると締まりのない表情だ。
「こんな隙だらけのダンデ、他のやつなんかに絶対みせらんねえだろ?」
「その通りだな…感謝するぜ…」
何だかニヤニヤしているキバナが気になるが、この気遣いのおかげでオレのイメージが保たれていたというわけだ。
…
気が向いたら続き足したい