JCジョーチェリ♀/虎次郎くんの受難 おろしたての制服に袖を通し、鏡の前で背を伸ばす。
きっと背が伸びるだろうからと大きめに作った制服はややぶかぶかで、お世辞にも格好いいとは言い難い。
それでも、昨日までTシャツと半ズボンで表を駆け回っていた小学生の自分とは違う、少しだけ大人になった自分の姿を見て、虎次郎は顔に笑みが広がっていくのを止められなかった。
「へへ……」
今日は入学式だから、と、学ランの詰襟をきっちり上まで留めて、虎次郎はおろしたてのスニーカーをつっかけて玄関のドアを開ける。
「いってきまーす」
家の中に声を掛け、門をくぐる。
「遅い」
間髪入れずに飛んできたのは、幼稚園の頃から毎日一緒に登校している、幼馴染の薫の声だった。
薫は頭がいいからてっきり私立の中学を受験すると思っていたのに、通学に時間が掛かるからという理由でそれを断り、虎次郎と同じ地元の公立中学へ進学を決めた。
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