もうすこし「スズラン、今回の任務。お前は屯所へ残っていろ」
部屋に響く声は厳しく、つんと突き放す様。いつもより険しい顔で、藤堂平助はスズランに言い放った。スズランは長い睫を蓄えた大きな瞳を瞬かせて「え?」と吐息の様な小さくか細い声を漏らした。シンと静まった部屋にその声は響いて、藤堂はわざとらしく大きなため息を漏らしながら「聞こえなかったのか?ついてくるなと言っている」とだめ押しの一言。スズランは喉まで出かかっていた「なんで」という疑問を静かに飲み込んだ。しかし、その疑問は顔に出ていたのであろう。藤堂は何度目か分からない溜め息をついて、木で作られた腕で足元を指した。
「その足で、長い距離、歩けるわけないだろう」
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