彼女とカフェで待ち合わせ/乱凪砂※アイドル乱凪砂だということはバレない世界だと思ってお読みください。
アイドル設定を遵守したいとは考えておりますが、たまにはこういった第三者目線のお話も良いなと思って書きました。苦手な方はお気をつけください。それではよろしくお願いいたします。
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「綺麗な人……」
私が働くカフェで良い意味で場違いな美しい男性がコーヒーを片手に本を読んでいた。整った鼻筋に綺麗な横顔、長く繊細な睫毛に少しつり上がった目尻。キリッとした眉にサラサラの銀髪。こんなに美しい男性は初めて見た。
彼のオーラは特別で、まるで周りを牽制するかのように静かだった。その神秘的なオーラに、あまりにも綺麗な人のため、周りのお客さんもうっとりと見入っていた。
接客の合間に遠くから見つめていたが、もう30分以上はあそこに座っている。お連れ様がいらっしゃると伺っているので、しばらく待っているらしい。
ふと彼のスマホが鳴り、メッセージを確認した彼の口角が少しだけ上がり、ふわりとした雰囲気になった気がした。見間違い?
カランカランと店のドアが開き、「いらっしゃいませ」と私が言った瞬間、彼も入口の方を振り返った。その女性は誰かを探しているようだった。
「あの、連れがもう来ていると思うんですが……」
もしかして。そう思い「あちらの方ですか?」と答えると彼女の表情はパッと明るくなった。
「凪砂くん!」
彼は彼女を待っていたみたいだ。小柄で綺麗な女性が彼の元に駆け寄った。
「おまたせ! ごめんね。お仕事が長引いちゃって」
「うん、大丈夫」
先ほどとは打って変わってふわふわとした満面の笑みで彼女を迎えていた。先程のメッセ―ジは彼女だったようだ。見間違いではなかった。
「今日も綺麗だね」
「もう! こんなところで言わないでよ!」
「ふふ」
彼女のことを愛していることが周りにも伝わるようでこちらも幸せな気持ちになる。先程まで見とれていた周囲のお客さんもにやにやとしていた。
「結構待ったよね? ごめんね」
「……いや。ほんの数分、かな。」
嘘だ。これは彼なりの優しい嘘なのかもしれない。
「嘘でしょう?」
「……正しくは違うね。でもうそではないよ。君を待つ時間はいつもすぐに過ぎるから」
開いた口が塞がらない、というのはこういうことなのかもしれない。まるで彼女に会えるのなら、いつまでも待てる、というより待っている感覚ではないと言っているようだった。その言葉だけで、彼女のことをいかに愛しているのかが分かる。
彼女も嬉しいのか顔を赤らめていて、「もう」と口では怒ってはいても照れているようだった。
しばらくの間、接客で近くのテーブルに行くと二人が楽しそうに話している声が聞こえた。彼の手には既に本はなく、彼女の話に真剣に耳を傾けていた。
二人が席を立ってお会計に現れると、二人の身長差と体格差にきゅんとした。
横目で見ていただけだったので気づかなかった。彼は綺麗な顔立ちとは裏腹に、ごつごつとした肩幅と大きい背中。脚は長く、骨ばった腕をしていた。
対する彼女はスラっと細身の身体で、恐らくそんなに小さい身長ではないはずだが、彼と並ぶと体格差が十分にあり、小柄で可愛らしく感じた。
「あの……?」
「はっ。失礼しました! お会計ですね」
「ごちそうさまでした」
にこりと微笑んだ彼女に、彼女の良さが全て詰まっている気がした。退店した二人の後ろ姿に見とれていると、仕事をしろと先輩に怒られてしまった。
また、このお店に訪れてほしいな。