暁、星に「……子どもでも乗せたのか」
「え?」
主語がなく、唐突で、しかし言わんとする事は正確に捉えなければいけない主人の言葉には慣れたものだが、今回ばかりは上手くいかなかった。
言葉の真意を探り沈黙していると、呆れたように主人は言った。
「それはどうした」
バックミラー越しに示唆する視線を追うと、ダッシュボードに無造作に置かれた飴やガムやソフトキャンディの類を捉えていた。
ああ、と納得する。自分が甘いものを好まないと、存外周囲を正確に把握している主人は知っているのだから疑問にも思うだろう。
実際、三日前まではなかったものだ。
「子ども――……と言えば子ども、ですかね」
曖昧なこたえに、主人はふん、と鼻を鳴らしただけだった。
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