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    ラリ子

    @gorirariko

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    ラリ子

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    エリソーの色々捏造妄想話 冒頭
    濡れてるうにくんはえっちです

    これがノア休の展示物になるといいなと思ってます

    #极刺
    extremeSting
    ##エリソー

     酔いを醒すためだったのか、その光に誘われたからだったのかは、あまり覚えていない。
     ただ、談話室内のバーでしこたま飲んだ後に見上げた夜空は、降り落ちるほどの星が輝いていて――そのきらめきにエリジウムは堪らず、くらくらとその場に尻もちをついた。


     昔、遥か昔、夜空の月が割れるよりもずっと前、無からこの世が生まれたらしい。爆発とともに世界が拡がって、クォークとレプトン、この世の全てを構成する小さな小さな物質が生まれたのだそうだ。この世界に満ちている、空も、星も、命も、水も、源石も。全て、基は同じ。
     ……という逸話は、いつだったか、部屋で酒を舐めながらソーンズと話しているときに聞いたものだ。へえ、小さいものに興味あるんだ、と適当に返したエリジウムに、ソーンズはいやと首を振った。

     ――変化しないものを見ていてもつまらない。
     ――でも知識としてはおもしろく思ってるんでしょ?

     だからほら、僕に話した、とエリジウムはほほ笑んで己を指したことを覚えている。

     ――お前も知っておいたほうがいいと思ったからだ。
     ――あはは、僕がリーベリとかエーギルとか気にしてるから? 皮肉だなぁ。

     そうだった。あの日、エリジウムは頬に赤黒い痕をつけていたのだ。
     ロドス艦はイベリアにほど近い荒地まで来ていた。近くにキャラバンがいると聞いてソーンズと二人出かけたのだ。出会って間もない同室のエーギルと、仲良くなれる機会だと思った。
     そのキャラバンの商人はリーベリだった。同じリーベリのエリジウムが連れているのがエーギルだと見抜いた商人は、目元を歪めてソーンズを嘲笑った。威勢は張っていても、結局リーベリの供でなければ買い物にも来れやしない、やはりエーギルは卑しい、と。
     撤回しろと憤慨したのはエリジウムだった。ソーンズは口でエリジウムを止めたが、商人が言い返してきて、口論に応じる間もなく頬を殴られた。すぐに周りから人が寄ってきて、エリジウムらは引き離されて、それきりだった。
     艦内に戻り、軽い手当てをしてもらって自室へ帰ったエリジウムに、ソーンズが酒の揺れる瓶を掲げて見せた。
     幸い口内に怪我はなかったものの、消毒だと嘯かれるままそれを流し込んで、酔いと一緒に愚痴を吐き出し、軽く眠った。星明かりに目を覚まし、飲み直しながらソーンズと取り留めもない話をしたのだ。

     ――あの男だが、イベリアに深い関わりは無かったようだ。
     ――そうなの? じゃあなんで、エーギルを差別するようなことを……。
     ――自分より下の存在を見つけて自尊心を満たしたい、安堵したい、そういうやつは少なからずいる。そこにお前が憤慨するほどの本質などない。過剰に反応するのは、よしておいた方がいい。
     ――……そうなんだ。でも、君が蔑まれたのは本当で……。

     言ってから、はあ、とエリジウムは項垂れた。

     ――ごめん。僕も結局、君のため、エーギルのためって名目で自己満足したかったのかも。エーギルの君は被差別集団に属している哀れな存在だから、僕が守ってやろうって……心のどこかでは多分そう思ってた。こんなんじゃ、いつまで経っても差別なんかなくならないのに。

     君と対等になりたい、と情けなく呟いたことを覚えている。

     ――星も、水も、空も、僕と君も、もとは全部一緒で――一番小さなものまて溶けてしまえば、混ざり合えるのに。
     ――溶けてしまったらつまらないんだが。

     その男は、夢もロマンも悲壮も、すべて壊してそう呟いた。
     その強さがエリジウムには好ましくて、同室だからとか、同郷だからとかではなく、ただこの人と友達になりたいと、そのとき強くそう思ったのだ。


    「雨でも降ったのかな……」
     そう思うくらい、夜空は相変わらず澄み渡っていた。尻もちをついたままの下半身が冷えてきたのを感じて、エリジウムはふらふらと立ち上がる。
     もの凄くいい星夜だ。ソーンズも呼んでやりたかったな、と心の中で呟いた。
     今日は珍しく、ソーンズと顔を合わせないまま部屋を出てきた。ソーンズの方が早出とかで先に出ていたのだ。食堂でも、艦内の通路でも彼を見かけず、勤務終わりに談話室へ寄る前に一度戻った自室にも、彼の姿はなかった。
     ただ、鞄が部屋に置かれていたから、珍しく先に戻ってきたんだな、とだけ思った。珍しく、どこかへお出かけしているんだなとも。
     珍しく――今日はそれが多いなとふと思ったところで、ぺた、と足音のようなものが聞こえ、エリジウムは首を回らせた。光が見えた気がして、ぱち、と瞬きをして見たそれは光などではなく、今思い浮かべていたソーンズその人だった。
    「あ、ソーンズ。君も甲板に出てたんだ」
     いい星だよねぇ、と大股に歩み寄る。欄干にほど近い場所に立っていた彼は、ああ、と頷くような、俯くような素振りを見せた。
     星は上だよー、と彼の頬を手で包んで、無理やり顔を上向かせる。手で触れて、顔を覗き込んでようやく、彼の身体が濡れていることに気がついた。
    「えっ、ちょっと、びしょ濡れじゃん……やだなあ、風邪ひくでしょ。どうしたの? あっ、まさか雨の中作業していたとか?」
     だめだよ、と文句を口にしながら自分のコートの中を探って、エリジウムはハンドタオルを手に彼の顔面を拭う。
     しっとりと濡れたまつ毛の毛先につく玉はひどく美しく見えたが、そんなボケたこと言ってらんない、とめちゃくちゃに拭いて、ほら部屋戻るよ、と手首をつかんで、ぞっとした。
     彼はいつもの手袋をつけてはいなかった。ついでに足も裸足で、いつものようにズボンの片方の裾が捲れ上がっていた。その、服の袖や裾から、星の光を弾く水が垂れ落ちてきていた。
     ソーンズの服は濡れていなかった。ただ、彼の生身の身体だけが濡れそぼっていた。
     ぞくりとうなじを嫌なものが這う感覚から目を逸らした、その視界の隙に、欄干の足元を這う水を見た気がした。
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    ラリ子

    INFO『思春期のエリくんアンソロジー』に寄稿させていただいた小説のサンプル分になります。サンプル範囲は画像形式のものとほとんど変わりません。
    初夜に全力すぎる余り全力すぎてしまう思春期のようなエリジウムくんとなんなかんや受け入れてくれる感じ……多分……なソーンズくんです、よろしくお願いします!

    ・思春期のエリくんアンソロジーHPはこちら
    (https://mariehana4649.wixsite.com/mysite/sample)
    鳥類的"sexual"コミュニケーション【サンプル】『清く正しい性行動』
     ……果たして本当にそんなタイトルだったかは覚えていないが、おおむねそんな感じの文言が題された薄っぺらい書物を、青少年期に読まされたことがある。内容の四分の一程度はなるほどと頷ける感じで、四分の三は当時の自分でも奇妙だと思えるくらい、おかしな事柄の陳列だった。じっさい、周囲の連中と笑いながら読み捨てていた気がする。
     当時の自分にとって、面白くも必要性もなかったその書物の内容は、結局かけらほどしか記憶として残っていない。しかしエリジウムは、十数年後の自分のために記憶しておくべきだったと、まさに今、頭を抱えるほど後悔していた。
    「普通でいい」
     そう言ったのは、ここロドスで出会ったエリジウムの友人で――そしてつい先月交際相手というものにもなった男、ソーンズだった。
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