「本当にごめん!」
画面越しに謝ったスティーヴンに、片手で端末を持っているらしいジェイクが息を吐く。ちょっとだけ眉を上げた彼は、しばらくの間むっつりと唇を曲げてから運転席の背に凭れた。ちら、と上目に見たスティーヴンの様子があまりにしょげていたからか、仕方ないなあという調子で笑った彼が頷く。許してくれたことに力が抜けて良かったあと机に突っ伏した。
スティーヴンが冷蔵庫に入っていたチョコレートを食べてしまったのは今日の朝のことだった。数日間ずっと置きっぱなしになっていたから、あれまだ残ってたんだと何気なく開けて――そうして空にしてしまったのである。誰が買ってきていたとしても自由に食べてと入れておくことはよくあったから、今回のチョコレートもそういうものなんだろうなと思い込んでしまっていた。
そういえば端の方に隠すみたいに置かれてたな、と今更思い出して眉を下げる。そういえばあのチョコレート美味しかったねとメッセージを送った時のジェイクの取り乱しようは凄かった。車ごと飛び上がったのが文面から伝わってくるほどだった。あまりにも落ち込んだ様子にたまらず通話で謝ったものの、ジェイク自身も事故であることは分かっていたらしく、怒りというよりは悲しみが大きかったようだった。
それもそのはずである。
あのチョコレートは、マークが『美味かったから』と自分たち二人のために買ってきてくれていたものだった。
すぐに食べてしまったスティーヴンとは違ってジェイクは後で食べるつもりだったらしく、いそいそと宝物のようにしまっていたことは知っている。それなりに前の出来事だったから、てっきりもう全部食べてしまったものだと思っていた。また買ってきたんだなんて軽い気持ちで頬張ってしまうべきではなかった。なんだか段々と罪悪感が増してくる。