副反応とバナナ 目覚めると何故か部屋に三尊がいた。
「おー、よしよし、お注射大変でしたね、いいこいいこ」
光瑶が優しく頭を撫でる。
「あぁ、おでこが熱いですね」
曦臣がおでこを大きな手で触れながら心配そうに覗き込んでくる。
「お熱が高いようです。冷泉に連れていき清めさせましょうか?」
「二哥、それではこの者が死んでしまいます!」
2人のやり取りを少し離れたところで明玦が見ていた。
「病気では無いんだ、黙って寝ていろ」
冷たく言い放ち部屋を後にする明玦の後ろ姿を残された二人は困った表情で見送った。
「申し訳ありません。大哥は素直ではなくて……。決して悪い方ではないのですよ」
「副反応で苦しんでいる方にもう少し優しい言葉はかけられないんでしょうか?」
「おーーーい!曦臣!!開けてくれー!」
扉の外から聞こえたのは無駄に大きい明玦の叫び声。
曦臣が慌てて扉を開くと、明玦は逞しい両腕いっぱいにバナナを抱えて堂々と立っていた。
「バナナって、普通リンゴじゃないですか?大哥、これでは完全にゴリラですよ」
「阿瑶、バナナは胃腸に優しくて熱で弱った時も食べやすいんだよ。カリウムが豊富でその利尿作用には、水分や毒素を排出し熱をさげる効果があるんだ。大哥がゴリラに見えてしまっても、バナナは熱にとても有効なんだよ」
ゴリ……明玦は光瑶にどうだと言わんばかりにバナナを抱えたまま胸をふんっと張り威張り散らす。光瑶はゴリラへの殺意を覚えた。
「つべこべ言わずに食え!」
ゴリ明玦は布団の空いたスペースにどさどさとバナナを乱暴に置くと、そのうちの1本を手に取り手慣れた様子で剥き始めた。
そして躊躇うことなく口に突っ込んできたのだ。
「大哥、もっと優しく食べさせてあげてくださいよ」
「確かに、このバナナはまだ硬そうだな。切ってくるか?」
「ああ、そうだ。いい考えが思い浮かびました!少し待っていて下さい」
曦臣は何かを閃いたようでキッチンへと消えていった。
数分も経たず戻ってきた彼の手にはヨーグルトが握られていた。
「阿瑶、バナナを剥いてくれるかな」
「はい、二哥、こうですか?」
光瑶がするすると皮を剥く。
「ああ、とっても上手に剥けたね♡」
「ふふっ♡バナナの扱いには慣れてますから♡♡」
「このヨーグルトをこのバナナに掛けたら柔らかくなって、栄養価も増すと思うんです!」
「流石、二哥♡素敵な発想です♡♡」
「では、曦臣、孟瑶、早速やってくれ」
「「はい♡」」
光瑶が持った反り立つバナナに柔らかく濃厚で真っ白なものがかけられていく。
※何故皿を持ってこなかったのかというツッコミはしてはいけない。
「あぁ♡♡二哥、そんなに沢山♡もっとゆっくり♡」
「阿瑶ならきっと上手に受け止めてくれるだろう♡おや?垂れてしまったね♡♡♡ちゅっ♡んッ♡あぁ、凄く美味しいね♡♡♡」
光瑶の手首にまで垂れてしまった白いどろどろのものを曦臣が唇で舐めとっていく。
※何故皿を持ってこなかったのかというツッコミはしてはいけない。
「我慢ならん!!俺にも食わせろ!!」
明玦は2人が持っているバナナを大きな口で咥え込む。
「んぐっ、むむっ、曦臣!追いヨーグルトだ!!」
「大哥、畏まりました」
「ま、まだかけるんですか?」
ヨーグルトが追加されたことによりますます光瑶の手は白いどろどろまみれになるが、曦臣が汚れたさきから丁寧に舐めとっていく。
「少し多すぎたな」
明玦はちゅっちゅっ♡と可愛らしく音を立てながら硬い棒の周りの白いどろどろを舐めとっていく。
「私も少し味見がしたいです、あむっ♡」
光瑶は大胆にもまだ誰も齧っていないバナナを先端からパクリとくわえ込んだ。
「んッ♡♡おっきぃ♡♡♡大哥の(持ってきた)ばにゃにゃ、おっきくて、おいひいれふ♡♡♡」
「では、私も」
続いて曦臣がバナナの真ん中辺りにパクリと齧り付く。
「ぁッ♡♡♡ほんとうに♡♡♡大哥の(持ってきたバナナ)、しゅごく♡♡立派で♡甘いでしゅ♡♡♡」
「こらっ、お前たちばかり食うな!はむっ♡♡♡あぁ♡♡少し硬すぎる♡♡だが美味い♡♡♡♡」
熱を出したものが目の前にいることも忘れ、3人は仲良くヨーグルトがた~っぷり掛かった立派なバナナを貪りあうのだった。