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    ルカ🍹

    @RukaDc

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    ワンライに挑戦してはじめて90分以内にできあがりました!!
    +29分でギリギリです。60分の壁はまだ遠いです…。
    お題は「ハロウィン」「スーパーマーケット」をお借りしました。
    前月までのワンライのお話と繋がっていますが、単独でも読めます。
    降谷さんの片想いからついに両片想いにたどり着いた降志のその後のお話です。

    これは二人の未来のはなし 自動ドアを潜り、まず視界に飛び込んできたのは、ごろりと大きなかぼちゃだった。
     オレンジと黒。それから、黄色と紫。コウモリ、蜘蛛の巣、ランタン、おばけ。華やかな装飾が売り場を彩っている。
     今日は十月三十一日。そう、ハロウィンだ。
     降谷は近所のスーパーマーケットを訪れていた。と言っても、降谷の自宅の近所ではない。宮野志保の、自宅アパート兼ラボの近所である。
     とある事件に関わる映像解析を依頼するため、夕刻に彼女の自宅を訪問した。依頼はまだ終了した訳ではない。現在進行形で、解析をしている真っ最中だ。
     懸命に解析を頑張ってくれているのは、彼女が開発した万能な解析ソフトで。その間、人間は暇を持て余すことになる。
     時間も時間だったから、夕食を食べようかということになって。けど、長時間自宅を空けている訳にはいかないから、家で食べようということになって。それならば買い出しをしなくては、と。そういうことになった次第だ。

    「せっかくだから、ハロウィンぽい料理でも作ろうかしら」
    「このかぼちゃを使った料理ってことか」
     右手を伸ばし、二分の一にカットされたかぼちゃを手に取る。種がしっかりと詰まっており、ずっしりと重い。果肉の色は鮮やかで、皮の色は艶やかだ。
     申し分ない品質だろう。カートに乗せたカゴの中へ、そっと入れる。
    「和風より洋風……かな」
    「かぼちゃのミートドリア、とかは?」
    「いいな、それ。美味そう」
     メインが決まれば、あとは副菜だ。サラダとスープにしようと、二人の意見は一致した。冷蔵庫の中身について志保に確認を取りながら、必要な材料を一つずつ選んでいく。

     ハロウィンは、元々はアイルランドに暮らしていたケルト人が起源の祭りらしい。彼らにとって秋の終わりであり、同時に冬の始まりでもあるこの日は、死者の霊が家族を訪ねてくると信じられていたそうだ。
     日本でのお盆のようなものだろうか。しかし、現在この国に伝わるハロウィンは、全く性質の異なった楽しく愉快なイベントへと変化している。

    「降谷さん、見て見て。ハロウィンのお菓子、たくさん売ってるわ」
     野菜売り場、精肉売り場などを抜けて、菓子類のコーナーにたどり着いていた。
     ハロウィン限定のパッケージをした袋菓子が、陳列棚にたくさん積まれている。これらは、今日中に売り切りたい商品だ。夕方の集客ピークを前にして、早くも値引きされているものもあるようだった。
    「こういうのって、中身は普通のお菓子と一緒なの?」
    「たぶんそうじゃないかな。けど、見た目が可愛いよな」
    「そうよね。せっかくだし、いくつか買っちゃおうかしら」
     志保は右手にチョコレート、左手にクッキーの袋を手に取った。視線の先があっちへこっちへ。棚に並ぶ別の菓子にまで、目移りしてしまっているようだ。
    「全部買う?」
     ついつい、口元が緩んでしまった。志保は、ハッとしたようにこちらを見た。
    「ご、ごめんなさい。私、浮かれすぎよね」
     いい歳して、恥ずかしい。その顔には、そう書かれているようだった。決まりが悪そうにして、志保は両手の袋を手放した。
    「いや。僕も浮かれてるよ。全部買っちゃおう」
     伸ばした手で、まずはチョコレートの袋を掴む。次にクッキー。それから、パイ菓子にポテトチップス。掴んではカゴに放り、掴んでは放り……と繰り返していく。
    「えっ、ちょっと待って! そんなに?」
    「だって、食べるのは今日中じゃなくてもいいんだし。けど、買えるのはもう今日だけだぞ」
     あっという間にいっぱいになってしまったカゴを見て、志保は丸めた目を瞬いた。
    「貴方……結構浮かれてるわね」
    「浮かれてるって、さっき言ったろ」
     どうやら、見た目にはそう見えないらしい。けれど、やはり浮かれている。
     そりゃあ当然浮かれるだろう。浮かれるに決まっている。
    「降谷さん、こういうイベント好きなの?」
    「そうだな。結構好きだよ」
     クスリ。未だ不思議そうにしている志保の目を見て、微笑みかける。
    「付き合ったら、こういう年中行事のイベントごとなんかは、大切にするタイプかな」
    「……えっ」
    「意外だった?」
    「へっ?」
    「クリスマスに、誕生日に……。あとは何があったっけ」
     見る見るうちに染まり上がっていく、白い肌。
     そのあからさまな変化を確認しながら、一つ一つ言葉を選び、声に乗せて畳み掛ける。
    「……け、けど……」
    「ん?」
    「降谷さん……お仕事、忙しいでしょう」
     彼女も言葉を選んでいる。遠慮がちに、ぽつりぽつりと零れる小さな声。
    「それはまぁ、そうなんだけどさ。……その時は、あとで埋め合わせするぐらいしか、できることはないかもだけど」
     苦笑いを浮かべる。避けられない現実はある。しかし、当然理想だってある。
     志保の瞳が、降谷の口元を見つめている。眼差しから、緊張が伝わってくる。
    「大切な日を大切な人と過ごしたい。そういう気持ちはもちろんあるよ」
     目と目が合う。大きな瞳を真っ直ぐに見据えて、そして。
    「僕だって、ただの男だ」
     綻んだ唇から、情けない本音が零れ落ちた。

    「あの……あのね」
    「うん」
    「ハロウィンも、クリスマスも、誕生日も。……一緒にいたいって、思う。わ、……私も」
     志保は俯いてしまっていた。
     さらさらと落ちる髪。見えなくなった横顔。
     その中で一つだけ、覗いている真っ赤な耳。
    「……うん」
     志保には見えていないけれど、降谷は小さく頷いた。
     広げた右手を、丸い後頭部の上に乗せる。滑らかな髪を、そっと撫でる。

     想いが滲む。混じり合う。
     溢れ出すまで、あと少し。
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