口付けはピーチ味/凰孝「凰香、アメ舐めた?甘い味がする」
ちゅ、とリップ音がした後離れた、目の前の唇は、そう言葉を紡いだ。
「…………はあ??」
突然の出来事に理解できず、思わず惚けてしまう。ぐるぐると脳を巡らせているうちにも、やわらかく甘い感触を受けてしまった身体は勝手に反応し、どくどくと血の心臓が早鐘を打っていく。
それは本当に唐突だった。
なにも事前に甘い雰囲気や口付けられるような兆候があった訳でもなく、まるで息をするかのように当たり前に、そして突然に眼前に迫り、やわらかな感触がした事に気づいたのだ。
「いや、飴だとか味だとかではなく……なんで、いきなりしてきたんだ」
「嫌だった?」
「嫌……では、ないが」
恋人になってそう日が浅いわけでもない自分達なのだから、今更だ。ただ、さっきのように急にされる行為には、とことん弱い。
心臓が爆発するような心地がして、落ち着かないから。
「……俺、最近仕事が忙しくて中々会えなかったでしょ?でも、今日は久々に顔見れてうれしくなっちゃって……しちゃった」
「……っ」
えへ、と小首を傾げて、少し申し訳なさそうな、それでいてふにゃりと幸せそうな微笑み。
それを浴びて無事でいられるはずもなく、熱を持った自分の頬はさらに温度を高めていく。
ーーどうしようもなく、かわいい。想いが溢れて、たまらない。
こっちだって久しぶりなんだ、どうなっても知らないからな。
そう胸中で呟いてから、頬を包み込んで噛み付くように唇を奪ってやった。