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    Hi_Ku_Ka_E_To_U

    @Hi_Ku_Ka_E_To_U

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    Hi_Ku_Ka_E_To_U

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    以前診断ででた結果に悶えた結果。
    じゅゆの予定ですが、パロディ色が強いです

    神様と人間神様と人間
    「なーんか、おかしいんだよなぁ」
    はぁ、と一つため息を吐いた青年はお気に入りの木の上で寝転んだ。彼は時代遅れも良いところの、袴を着ていた。動き辛そうな服装だが、それが彼の普段着だった。
    「ニャー」
    「ん?どうした、ファラオ」
    彼と同じように木の上で日向ぼっこをしていた猫が彼の腹部を足蹴にしてきた。
    「お前な…」
    苦笑しつつ好きなようにさせる。猫は古来より霊感が強く、人ではない者を視る能力に長けている。このファラオだってその一匹だ。

    そう、ここに寝転んでいる青年は人ではなかったのだ。

    ◇◇◇

    青年…遊城十代は神だ。
    八百万の神の内が一人、蛇の神を名乗らせて貰っている。蛇にも種類があり、その中で幸運とされる白蛇の神の名を司っているのが十代だ。
    特にそういうつもりでもないが、拝命を受けたのなら取り敢えず全うする。心意気などが一切ないのが彼らしいといえるだろう。
    そんな十代が任された土地は都会から少し離れた、自然が豊かな過ごしやすい神社だった。すぐさまそこを気に入った十代はこの神社を守り続けてきたのだが、これまで感じたことのない異変はここ数年に渡って起こっている。
    まず八百万の神を知っているならば十代に歯向かおうとする者などいないに等しい筈なのだが、無謀にも十代を狙おうとする低級あやかしが増えている。これまでにもそういった類いは居たが、皆十代をどうこうしようとする者ではなく、ただ単に遊びにくるような軽い感覚で来る者が多かった。それに対して全力で遊ぶのが日課だった。最近は共に遊んでいた彼らを見かけない。
    あとは妖気が街中に蔓延っているのも気になる。この件に関しては土地神が何とかしてくれるだろうが、その尻拭いがこちらに向かうのは面倒だ。
    「…ん?」
    一人の少年が眼下に映った。ここに用があるのは十代に参拝したい物好きだけだろう。
    神社は表向きにあるが、十代を奉っている社は森の奥深くにある。社が建てられた時、十代自身がその時の宮司にそうして欲しいと願ったのだ。そのせいか表方面での参拝客は居るが、ここまでくる者は殆ど居なかった。神の有り体は信仰心で決まってくる。だがそんなものに興味のない十代は信仰心が足りていない。それでも強力な神気を持っているのは生まれもってのものでもあり、ある一人の人物のおかげでもあった。その人物は生涯を十代に捧げ、満足そうに死に絶えた。流石にそこまでされて何も思わなかった訳ではない。だが、それ以来十代は人と関わりを持たない方がいいと学習したのだ。これまでは様々な人間と話したり、遊んだりしていた十代だったが、その一件以来心を閉じ込めてしまった。
    眼下に映る少年は足取りが覚束ないまま周りを見回している。どうやら道に迷ったようだった。
    「…」
    暫く眺めていたが一向に立ち去る気配のない少年に諦めて十代は、見た目を少年と同じ年のように変えて接触した。下手に大人だと警戒されかねないからだ。
    「おい」
    「!」
    声を掛けると少年は肩を面白いくらい跳ねさせた。
    「こんな所で何やってんだ?迷子か?」
    茂みを掻き分けて近づく。少年は十代を視認すると息をついた。
    「…自分の家で迷子な筈がない」
    「家?」
    「あぁ」
    よくよく少年を見てみれば確かに、今の宮司と顔立ちが似ている。彼は宮司の子供なのだろう。
    納得はできたがそれでも幼い子供がこんな森に用事があるとは思えなかった。
    「お前の方こそ何だ」
    「俺?俺は…えーと」
    逆に聞かれる立場になってしまった十代はどういえばいいのか困ってしまった。何とか無難な言い訳をしなければこの少年に怪しまれてしまう。それでなくても既に少年は十代を警戒していた。
    「俺の方こそ迷っちまっててよ!」
    ハハハ、笑って言ってみてから少年の様子を伺う。どうやらそれで納得できたらしい少年は緊張を解いていた。こういった所が子供だと思う。
    「…神社から迷いこんだのか?」
    「そうだったかなー?」
    「…」
    「あぁそう!そうそう!」
    うやむやにしようとする十代を訝しみながら少年は指を後ろに向けた。
    「そのまま真っ直ぐ進めば戻れる筈だ」
    「サンキュ。…お前はどうしてここに居るんだ?」
    「関係のないことだ」
    「ふーん」
    「?」
    気のない返事をした後、中々戻ろうとしない十代に少年が首を傾げた。そんな少年にニッと笑いかけて茶目っ気ぽく片目を閉じる十代。
    「俺もついてっていいか?」
    「は」
    突然の申し出に当然ながら少年は困惑する。断わろうにも既に十代は少年の動向を伺っている。
    「…」
    無視を決めこんだ少年は振り向く素振りも見せず、再び森に入って行った。

    ◇◇◇

    「なー」
    「…」
    「なー」
    「…」
    「なーってば」
    「…何だ」
    「結局お前は何処に向かってるんだ?」
    森の中を歩いてかれこれ数十分。そろそろ目的を教えて貰ってもいいだろうとしつこく少年に問いかけた。少年もずっと十代を連れ歩いていることに罪悪感が芽生えたのか、漸く口を開いてくれた。
    「…神社に奉られている神の祠だ」
    「へ」
    意外な回答に十代は素っ頓狂な声を上げてしまった。
    「…」
    「や、ワリィワリィ」
    ジト目で睨んでくる少年に慌てて謝罪する。まさか自分の場所を探しているとは思わず、十代は申し訳なく思った。
    (そりゃ探しても見つからないよな…)
    なにせ本人が自らの祠を消しているからだ。いや、消しているのではなく正確には『見えないようにしている』のだ。
    辿り着けるのは神社の宮司である少年の父親と昔から参拝してくれているトメ、という老婆ぐらいだ。なので新しく十代を参拝できる者は居ない。
    「何でその祠に行くんだ?」
    「…」
    「言えないか?」
    「言ったとしても信じて貰えないのがオチだ」
    「言う前から決めつけるのは良くねぇぜ」
    「!」
    俯いていた少年が顔をあげる。眼前の神は口角を上げていた。
    「…とう、さんが」
    十代の笑顔に惹かれるように少年の口からポツリポツリと理由が紡がれていく。『きっと彼なら信じてくれる』そう思わせる雰囲気が十代から溢れ出ていたからだ。
    「最近良くない"気"が街中にあるんだって。でもこの神社にはその"気"が殆ど無いって。それはここを護ってくれている神様のお陰だって。だから俺は…」
    「ふんふん」
    「俺は、その神様にお礼をいいたくて」
    健気だな、それが十代が少年に抱いた第一印象だった。一見無愛想に見える少年だが、その内側は優しい心の持ち主なのだろう。
    「で、神様の祠に行きたかった、と」
    無言で頷く少年を見つつ十代は逡巡する。彼に正体を曝すべきか。祠は既に結界を解いて見えるようにはしている。
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