プレゼント十代+遊星
※せだごえ
「…ん?」
気ままに世界を渡る旅の途中、十代の目に一つの部品が目にとまった。どこに使うかなんて一切解らないし、何なら十代にとってはガラクタに入るだろう小さな部品。しかし何故か今はその部品がとても必要な物のように思えた。
「…」
顎に手を当てて一つ息を吐く。頭に浮かぶのは機械類に一番詳しいだろう自分の一つ下の後輩の姿だった。最近入ってきた小学生の後輩も浮かんだが、まだそこまで話せていないせいか今一つ解らない部分があるのだ。それは主に十代が出歩いてしまうのが原因だが。
「…よしっ」
直感的に動いてしまう性分がある十代は店員を呼ぶとその部品を購入するのだった。
購入した勢いのまま歴代の決闘者が住む自宅に帰ろうとする。…といっても十代が居たのは海外で、帰れたのは万丈目に電話をして無理矢理飛行機に乗せて貰ったからだ。
「貴様はいつもいつも…!!」
「ワリィワリィ。また決闘するからさっ」
「っおい!」
後ろで小言を言う万丈目に謝りながらさっさと自宅への帰路についた十代は、もう一度端末を操って万丈目に感謝した。何だかんだで無理をきいてくれる万丈目にいつも頭が上がらないのは、十代の中での秘密だ。
「さて、と」
懐かしい街並みに自然と頬が緩む。後ろに提げているリュックには例の部品が入っている。
「気に入ってくれっかな」
殆ど確信しながら足取り軽く、十代は自宅へ向かった。
◇◇◇
黄昏が落ちる頃、自宅に着いた十代は玄関を開けた。
「ただいま」
ドタドタと奥から走ってきたのは2つ下の後輩、遊馬だ。
「十代さんだ!久しぶりだなぁっ」
「そうだっけか?」
止まる事なく走った遊馬は十代にダイブしてくる。それを受け止めるのが二人にとっての出迎えパターンだ。
「遊馬は…変わってなさそうだな」
「そんな事ないぜ!いっぱい決闘して、いっぱい強くなった!」
『そう思っているのは遊馬だけだろう』
「何だとっ!?」
遊馬の首から下げる装飾品が光り、中からアストラルが呆れたように首を横に振る。くってかかる遊馬を見ながら相変わらずだな、と十代は笑った。
「なぁ、遊星はどこにいるんだ?またガレージか?」
一頻り遊馬を抱っこした十代は彼を下ろし、目的の人物を訊ねた。聞いた遊馬は目を見開いてからそうだ!と大袈裟に手を叩いた。
「遊星さんまた寝てないんだ!十代さん何か言ってやってくれよ~」
「その遊星は?」
「多分、部屋だと思う」
「多分?」
追及すれば遊馬の目が泳ぎ始めた。ゴニョゴニョ口を動かす遊馬から何とか話を聞き取る。どうやらここ数日遊星と合っておらず、他のメンバーも同様のようだ。ご飯も作って置いているが減っている気配がないらしい。流石に体調を考えて遊戯が話そうと動いたらしいが、直後に遊戯はKCに呼ばれてしまいそこから缶詰になってしまったようだ。つまり。
「大分ヤベェ状況ってことだな…」
「…ハイ」
「こういう時の為のAiだろ?アイツは?」
十代は高性能だと自負するAIを浮かべる。彼ならば力づくでも遊星をどうにか出来るのではないかと考えたのだ。
「Aiなら…」
『呼んだ?』
ブーンとデュエルディスクが空を飛び十代と遊馬の前で停止する。止まったディスクの中央からAiが顔を覗かせた。普段は人間の型に入っている生き物に十代は顔を傾げる。
「何でソッチなんだ?」
『聞いてくれる?実はさ…』
Ai曰く。
十代の思ったとおり、彼は力づくで遊星を寝かせようと試みた。だが、何をやっても梃子でも動かないどころか段々とAiを邪魔だと認識したらしい遊星に思いっきり一本背負いをかまされ、soltisの身体を修理に出さなければならなくなった。修理代も馬鹿にならないので今は大人しくしている。
これが現状だった。
「…マジか」
『大真面です~』
「解った。兎に角行ってみる」
『遊星なら自室だぜ。ただし入れたらな』
「?」
Aiの思わせ振りな台詞に不思議に思いながら十代は二階へ上がる。
「遊星?入るぞ」
遊星の部屋の扉に手を掛けた…が。
ガチッ
「…は?」
ガチンガチッ
ノブが回らない。Aiの言葉はこれだったのかと理解する。
「…遊戯さん、すみません」
ガッッッ………バキャッ!!
無理矢理ノブを回して鍵を破壊した十代はそのまま中に入った。
「遊星、入るぞ」
もう一度先程の台詞を言いながら周りを見渡す。
デスクの前で突っ伏してる遊星を見つけるなり、慌ててその身体を起こした。
「おい!?大丈夫かっ!?」
「ぅ、うう…」
明らかに顔色が悪い遊星に焦りながらもベッドに寝転がせる。
「Aiーっ」
十代はバタバタ階下に降りて何か食べられるものをAiに頼むのだった。