オクジーくんはご飯を作りたい「オクジー君」
食卓の向こう側。いつものように食前の祈りを終えて、マッシュポテトを取り分ける俺の手元を眺めていたバデーニさんは、おもむろに言った。
「は、はい?」
「前から思っていたが」
と言って、食卓の上の料理を一瞥する。鶏肉と野菜のグリルとマッシュポテト、そして具材をたっぷり入れた真っ赤なビーツのスープ――これはバデーニさんの故郷の料理だと聞いて俺が特によく作るようになったものだ――俺は何か嫌いな食べ物でもあったかと、咄嗟に詫びる構えで肩を縮める。
「な、何か……?」
「いつもこんなに料理に手を掛けなくていいぞ。私は少食だし、美食家じゃない」
「あぁ、」
俺は少しホッとして、笑みを作る。
「それは、気にしないで下さい。俺が好きでやってるんで……」
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