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    monai

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    monai

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    考えをまとめておきたいだけに書いた短文 シルバーアッシュとドクターのあれこれ妄想

    シルバーアッシュのドクター評「おにいちゃんはドクターのことを前から知ってるんだよね?どんな人だったの?」
     忙しい合間を縫ってロドスへやってきたシルバーアッシュは今後参加する作戦の打ち合わせの後、妹のクリフハートに誘われてともにお茶をしていた。
    「…記憶がなくなってからはだいぶ落ち着いたが、酷い人間だったぞ」
    「ええ!うそ!優しくて賢いし酷い人なんて全然そんな風に見えないよ!なにかあったの?」
     クリフハートは机に身を乗り出して兄に尋ねた。
     談話室には休憩に訪れたオペレーター達がまばらに座っており、シルバーアッシュ達の話し声も他の話し声に紛れている。
     少しだけなら話しても構わないだろう。
    「アレとはヴィクトリアで学友だったのは知っているだろう。あの頃から突出した才能を発揮していて神経学者にも関わらず鉱石病、天災研究の権威。アレのお陰で50年分の研究が進んだと言われている。」
    「うん。とーっても凄い人でお兄ちゃんの自慢の友達だったんだよね」
    「自慢の友人であるのは今でも変わらないが、その内面は酷いものだった。表面上は愛想がよかったが、物を見ても人を見ても感情が動くことはない。さらにタチの悪いことに自分自身の価値と影響力をよく理解していたんだ」
    「というと…?」
    「アレのカリスマ性は以上だ。物憂いげにため息をつけば、アレに気に入られたい人間が寄ってくる。悩みごとを一言呟けばそれで終わりだ。あとは勝手に解決されている。研究費が欲しければ小切手を贈られ、新しい機材が欲しければ試作品を手に訪れる者はよくいた」
    「え?お願い事をよく聞いてもらっていたということ?」
    「似ているようで違う。アレは他人に頼み事をすることはない。必要がないからな。悩みを聞いたもの達が勝手にやっているだけだ」
    「うーん。つまりドクターの周りには、今のおにいちゃんの周りにいるような人が一杯いたってことだね?」
     イタズラを仕掛けるような顔でクリフハートはシルバーアッシュを見た。
     少し眉を顰めると軽く頭を横に振った。
    「アレより私のほうがマシだ。お互いに利益のある双方向の契約を結んでいる。アレは一方的な好意を利用していた。人智を外れるほどの才覚を見た人間の反応は2種類。嫌悪か崇拝だ。アレの周りには崇拝者が集まり、目に留まろうと常に気にかけていた。そのなかから使えそうな人間を選ぶだけでいい。選ばれたものは喜んでアレに奉仕し始めるのだから」
    「それってドクターがコントロールしてるわけじゃないよね。大変なことにならないの?こう、仲間同士とかで…」
    「互いに牽制しあっていた」
    「うわ………」
     不穏な兆しがあればドクターは絶妙なバランスで圧力をかけた。研究の片手間に烏合の衆を統制することは造作もないようで、傍らにいたシルバーアッシュは気味の悪さを感じていた。
    クリフハートは机に頬杖をつく。
    「ドクターのことは好きだけどそこまで盲目にはならないな。今の姿からは全然想像できない!」
    「ふっ、アレは容姿も良いからな。存在そのものがフィクションのような人間だ」
    「そうなの!?わたしドクターの顔を見たことないよー!今度お願いしてみようかな」
    茶の入ったカップに口をつけて渇いた喉を潤した。ヤーカはまた腕を上げたようだ。
    「怖い人かなって思うけどおにいちゃんの言う酷い人間でもなさそうなんだけど…」
    「あまりに酷すぎてここで話すのは憚られる」
     ドクターを嫌悪してきた人間の中には妨害やときに危害を加えてくるものもいた。シルバーアッシュがドクターの近くにいたのはドクターの身を守るためでもあった。しかし、ある日ドクターの邪魔となる人間は次第に消えていることに気がついた。ドクターに尋ねても、「私が困った顔をしていたからじゃないか」と要領を得ない返答が返ってくるだけだった…が、同時に納得した。
     消された。様々な方法で。
     ドクターの価値をよく知り、使うための権力や金を持つものがドクターの存在を脅かすものを排除するのは当然だった。当時のシルバーアッシュは今ほどの権力も金も持っていなかったのでボディガードまがいのことをしていたのだが、あくまで友人としてだ。ドクターは誰にもなにも頼んでいないが、間接的に人間を消していっているのは確かだった。そしてそれを意図してやっている。犯した悪事に対する責任の所在などどこにもなく、いつまでもドクターの手は綺麗なままだった。
     クリフハートは考えをまとめている兄の顔を見つめて待つ。
    「エンシア、アレにイタズラを仕掛けるのはほどほどにしておけ。何が出てくるのか分からない」
     深く付き合うには底が知れない。深淵を覗いた時生きて帰れる保証がないものをドクターは内側に飼っている。シルバーアッシュが友人になれたのも偶々のようなものだった。理由も、好みの小さい猫が噛んできて可愛かったからという、馬鹿にしているとしか思えないようなものだ。いまだ
    に思い出しても苦虫を潰した気分になる。
    「えーへへ。でもドクターがお仕事をサボろうとしたらお仕置きしちゃおうかな」
     歯を見せながらクリフハートがニッカリと笑う。引き際を見極めなければ危険なカランドの山を相手にする登山家の勘を、シルバーアッシュは信じるほかなかった。

     ロドス内に与えられた一室にシルバーアッシュは泊まる予定だったため、ドクターを呼びマッターホルンが作った夕食を共に取った。
     酒を飲みながらチェスを打ち、互いの近況報告など他愛ない話をしてドクターは自室に帰っていった。曰く、最近人事部と医療部が結託して、ドクターの健康管理を始め、決められた時間には自室のベッドに入る必要があるらしかった。連続で1週間破ると反省文を書かされると、不服そうな顔で言っている様子を見てシルバーアッシュは思わず笑ってしまった。
     自室の戸口まで見送り振り返ると、先ほどまで遊んでいたチェス盤の上に見慣れないものが置いてあった。
     潰された盗聴器だ。
     前回ロドスを訪れた際、贈ったネクタイピンの中に忍ばせていたものがわざわざ見せつけるように置いてある。シルバーアッシュは安い挑発だと鼻で笑った。
     影のように付き従うあの黒猫とは立っている土俵が違うのだ。気を引きたいがために手元でじゃれる猫とは訳が違う。こちらは獲物が罠にかかるまで付け狙うハンターなのだ。最後にドクターを手に入れるのはこのシルバーアッシュであると確信している。そしてカランドの大地をも手に入れ悲願を達成する。そのためにはドクターは必要だ。手に入れる方法はかつてのドクターから教わっている。
    「もうお前には私しかいないのだ…」
    記憶の深いところにあるドクターの姿を思い出し、つまみ上げた盗聴器をゴミ箱に放った。
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