瞳に映るのは自分だけがいい「…相変わらずすげぇ量だな」
そう呟きながら、俺は相棒が持ち帰ったのであろう、ダンボールの中に無造作に詰め込まれた手紙やら小包やらを見つめた。
俺があのガキに入れ込んだ時は、電波で掴めない風変わりな印象だったのもあり、そう敵は多くないだろう、と踏んでいた。
しかしよく考えたら地球人の中では容姿端麗の分類に入り、謎が多くミステリアス、かつ上辺っヅラは優しい、ときたらモテないわけがなかった。
おまけに隠してはいるが芸能人サマだ。
もしもアイツが顔出しなんかしたら、今以上に人気がでちまう。
そう思うとアイツが守ろうとしている覆面のブランドはありがたかった。
だが、時々考えることはある。
今のアイツは面白いものにしか興味がないみたいだが、もし地球人に本気で惚れ込んだら俺に勝ち目はあるのか、と。
恋愛だけじゃない、俺以上に面白いものと出会ったらアイツは俺から興味を失うんじゃないか、とも。
どうやってアイツの瞳に俺しか映らねぇようにしようか…そうぼんやり考えていたら、急に後ろから気配がした。
「やっぱり来てたんだ♪」
声に反応して振り向くと、そこには先ほどまではいなかった部屋の主が、ペンを片手に俺を見下ろしていた。
出入りに使用したであろう、空間に描かれたドアは、役目を終え消えかかっていた。
「クク…玄関から入ってこいよ地球人」
「何となくクルルが来てるんじゃないかなーと思って急いで帰ってきたのさ。ショートカットってやつ?」
「俺様のペンはどこでもドアじゃねーんだぜ?」
「今更そんな硬いこと言わないでよ」
そう言いながらサブローは俺の両脇に手を入れて、そのまま抱き上げる。
俺が来たことが嬉しかったのか、サブローの顔はいつも以上に緩んでいた。
大きくてキラキラ光る瞳に映った俺の姿を見て、思わずにやりと笑ってしまった。
どうやらいらぬ心配だったみてーだな、と。
何もしなくたって、サブローの瞳に映るのは俺以外いない。
コイツをメロメロにできるのは、俺様だけみたいだな。