最初のひとつを ふん!と瓦割りをするかのような気合の入った掛け声の後。ビニール手袋を嵌めた力強く握られた拳が開かれる。
開いた掌からは細かく砕かれた柔らかい焦げ茶の破片が溢れていく。
欠片はざらざらと音を立て金属のボールへと落ち、時々もれる上機嫌な鼻歌と共に部屋に小さく響いていた。
単独任務の帰り。
寮共用のキッチン横の廊下を通りすがった伏黒はキッチンから聞こえるに、似つかわしくない掛け声を耳にする。
思わず扉の覗き窓から部屋の中を確認すると虎杖の姿があった。
先程の掛け声は虎杖から発せられたもので間違いはないらしい。
作業台の周りに置かれたチョコレートの包み紙、卵パック、牛乳、その他などの材料から何かしらの菓子作りに挑戦していることが伺える。
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