モレーと兄弟騎士のやつ 初めてその男を見た時、奴は中庭の隅で膝をついて嘔吐していた。
入団の儀式に向かう直前だった。思わず足を止めかけたが、聖堂へ先導する司祭達は気づいていないのか歩みを止める気配がない。ここで立ち止まって怖気付いたと思われるのは困る。何も見なかった事にしてその場は去った。
儀式は筒が無く終わった。終わり際、君は堂々としていて素晴らしいと褒められた。当然だ。どんな厳かな儀式でもあの丸まった背中を思い出したら馬鹿らしくなる。
テンプル騎士団の悪評は耳に挟んでいた。神の僕を名乗っているが、その実金儲けばかり考えているとか、騎士たちは零落しきっているとか、噂話には事欠かない。だから昼間から騎士が泥酔して吐いていてもそこまで驚きはなかった。
1972