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    yu_ki_chan_san

    @yu_ki_chan_san
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    yu_ki_chan_san

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    兄弟騎士視点での生前モの話のやつちょっとだけ書いたから投げておく。
    続きは気が向いたら書くけどオチが思いつきません。どう足掻いても悲惨な末路だもんね。

    モレーと兄弟騎士のやつ 初めてその男を見た時、奴は中庭の隅で膝をついて嘔吐していた。
     入団の儀式に向かう直前だった。思わず足を止めかけたが、聖堂へ先導する司祭達は気づいていないのか歩みを止める気配がない。ここで立ち止まって怖気付いたと思われるのは困る。何も見なかった事にしてその場は去った。
     儀式は筒が無く終わった。終わり際、君は堂々としていて素晴らしいと褒められた。当然だ。どんな厳かな儀式でもあの丸まった背中を思い出したら馬鹿らしくなる。
     テンプル騎士団の悪評は耳に挟んでいた。神の僕を名乗っているが、その実金儲けばかり考えているとか、騎士たちは零落しきっているとか、噂話には事欠かない。だから昼間から騎士が泥酔して吐いていてもそこまで驚きはなかった。
     どうでも良かった。家を継げない俺の居場所になってくれるならどこでも良い。勿論、誇れる騎士となるのを期待しないわけではなかったが……。
     男との再会は意外と早かった。
     夜になり充てがわれた部屋に向かうと、昼間見た背中がそこにあった。今度は吐いているのではなく、跪いて神に祈っていた。
     相部屋になるとは聞いていたが、よりにもよってこの男とだとは思わなかった。一丁前に祈っているが、二日酔いにならないように懇願しているのかもしれない。そんな邪推をするほど丁寧な祈りだった。
     しばらく眺めていると、祈りを終えた男がこちらへ向いた。
    「よろしくお願いします」
     下手くそな笑顔だった。歓迎していないのだろう。ひとりで優雅に暮らしていたのに、今日から余計な奴が入り込むのだから当然だ。
     差し出された手を握り、こちらも淡々と挨拶をした。これがモレーとの出会いだった。


     案の定、騎士団は所々堕落していた。服装を守らない騎士や、女と密会している騎士を何度か見かけた。酒の匂いが強いまま千鳥足で歩いていた奴はその場で兄騎士に注意されていたが、数日後また同じ怒号を浴びていた。流石に庭で嘔吐していた奴を見ることはなかったが。
     モレーとの生活は思っていたより快適だった。奴は大人しく、無駄口を利かない。しかしいつまで経っても会話という会話もないのも事実だった。
     そろそろ本性が見たい。
     共同生活が2週間ほど続いた頃、就寝前に俺の方から声をかけた。
    「ここは意外と俗っぽい所なんだな」
     返答には間があった。モレーは自分への問いかけだと気づくのに時間がかかったようだ。
    「……嘆かわしい事です」
     絞り出された声は掠れていた。人とろくに会話するのは久しぶりなのかもしれない。それは俺も同じだったが。
    「この間、髪を伸ばした騎士を見かけたよ、規則では禁止されているのにな。誰も見て見ぬ振りだ」
    「全くです。兄達も大して咎めもしません」
     心底不愉快そうにモレーが応える。自分の事は棚に上げて清廉ぶっているのに少し苛立った。
    「女と密会してる所も見かけたし、あとは……真っ昼間から酒に酔って吐いてる奴も見たな」
     モレーを見る。特に表情は変わらない。
    「いつか罰が下るでしょうね」
     奴は冷淡に言い放つ。まるで自分には下るべき罰など無いかのようだ。
     もしかして皮肉を言っているのに気づいていないのか?痺れを切らしてはっきり言った。
    「あんた庭で吐いてただろ」
     ハッと息を呑む音がした。ここに来てから初めて見る奴の驚愕した表情に愉快な気持ちになる。
     バツが悪そうに俯いたまま、モレーがもごもご呟いた。
    「胃が……弱いんです」
    「は?」
     思わず間抜けな声が出た。胃が弱い。その意味を理解するより先に、必死の言い訳が続く。
    「次に入団する騎士がルームメイトになると聞いていたので、ど、どんな方なのか、な、仲良くやっていけるか考えていたら具合が悪くなってしまって……」
    「……」
    「あ、あくまで気の持ちようでどうとでもなります。私は至って健康です。で、ですが、はい、嘔吐してしまったのは覆せない事実で……」
     明かされる事実は、あの背中への嫌悪感を払拭していく。俺はようやく騎士団への失望をこの男にすべて委ねていた事に気づいた。
    「ど、どうか御内密にしていただけませんか。今後あの様な失態は絶対に致しません。あの日神に誓いました」
     成る程、初めて会話した時長々と祈っていたのは悔い改めていたのか。
     黙っている俺をモレーは不安そうに見つめている。顔色がどんどん悪くなっている気がする。放っておいたらこの場で吐くんじゃないだろうか。
    「ひとつ聞きたい」
     モレーが姿勢を正す。
    「俺はあんたが胃を痛めるような人間だったか?」
     その問いに肩の力が抜けたようだった。息をつき、こちらへ向く。
    「気さくな方で良かったです……」
     またあの下手くそな笑顔を向けられた。俺はようやくこの男が凄まじい人見知りだと知った。
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