どうやら、君には依存性があるらしいはじめのうちはな、とにかく楽しくなったのだ。気持ちが浮かれて訳もなく歌い出したくなるような、何もかもが楽しくて仕方がない。そのうち慣れてくると、少し落ち着いてきて、多幸感、というのだろうか、目の辺りだとか頭が熱を帯びたようにぼおっとなって、夢を見ているようにふわふわとした気分になる。しばらく経つと、今度はとても穏やかな気持ちになるようになった。日々の憂いや不安が消えて、何も怖くなくなる。心が凪いでゆったりとした時間が過ごせる。
そうしているうちにな、だんだん、足りなくなってくるのだ。それまでと同じでは満足できない。同じだけではかつてのような幸福感が得られない。もっともっとと欲しくなって、でも却って渇くようでな。今度は手元にないと落ち着かない。眠れない。しばらく断たれた時など泣きそうになったものだ。しまいには目が回って頭がぐらぐらして吐き気すら覚えるようになって、だが、それでも、手放せないんだ。夜を明かした翌朝どんなに後悔しても、求めずにいられないんだ。我ながらどうしようもないとは思うのだが、そのときは、やっぱり楽しくてしあわせで心が安らかになるんだ。
「……それは酒の話ですか」
「ん?いや、…ああ、ふふ、まあそうだな、うん。」
姿を見るとときめいて。
言葉を交わすだけで嬉しくて。
そばに居ると安心で。
けれど次第に物足りなくなって、全てが欲しくなって。
離れると苦しくて、うしなうのが恐ろしくて、泣きたくなるほど切なくて、胸が引き裂かれるようで気が狂いそうで、それでもただ、このひとときがどうしようもなく幸せで。
これは、恋の話だ。