卵焼き(乾海)あれは、中学生の頃だったと思う。
俺と乾先輩がまだ部活でダブルスパートナーだった頃、俺は先輩のことが好きで、先輩も多分俺のことが好きだった。
ある日、何がきっかけだったか忘れてしまったが俺は先輩に弁当を作ってやることになった。母親に事情を話して早朝にキッチンを借り、俺のと先輩のと、平日だから父さんの分の弁当を作った(葉末は給食だ)。
昼休みに校庭の端の奥まったところにあるベンチで待ち合わせた。辺りの地面を赤茶色の落ち葉が埋め尽くしていて、少し肌寒かったのを覚えている。外で弁当を食えるのは今週までだろうねと先輩が言って、だからこのタイミングで俺に弁当を持ってこさせたのかと思った。
先輩が一品一品に感想を言おうとするのが恥ずかしくて、早く食えと急かした。人がめったに来ない場所を選んではいるが、こんなところを誰かに見られてしまったら言い逃れはできない。
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