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    りんごおばけ

    @bakebakeRin5

    お話にならなかったネタとか飽きたやつとかぬるいR
    他、当面なんでもかんでも気まぐれにおきます

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    りんごおばけ

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    もはやらくがきだよな…という散文…ポエム…?
    夫婦と言えど2人して盛り上がってる時ばかりじゃないよな?ここで押し倒せ!が正解な気はするけど我慢させるのもまた良し!(笑顔)と思ってみた。
    甘いのか半端なのかキャラが違うのか全部だよ!

    Twitterで呟いてることと何の関係もなくてすみません。

    恋心はいつも遅れて木枯らしに吹かれながら家に帰ると、おやつにたい焼きが出た。いっこしかないそれを半分こして、あたしはたっぷり餡が入った頭のほうをもらった。お夕飯は旬のカレイの煮付け。ほんのり甘いタレが美味しくてついたくさん食べてしまう。食後のデザートにはリンゴをむいてきた。パリッとして甘すぎず酸味がちょうど好みのやつ。

    だからというわけではないけれど、何となく察してはいた。風呂の後、教科書を学校に忘れてきたから貸して欲しいだなんて、冗談にしてはつまらない理由で部屋に入ってきたのだから。
    とっくに寝支度を終えたあたしは布団の上にいたし、あんたはもう本当の理由を隠そうともしなかった。気づかないふりしてキスだけして、おやすみを言って離れようとした体に、腕を回された。

    「アンナ……、だ」
    「ダメよ」

    聞かれる前に一刀両断すると、葉は口をへの字にして、ぐぬぬ、と唸った。

    「なんでだ」
    「そういう気分じゃないから」
    「気分、って」
    「気分は気分よ。おやすみ」

    腕を振り解いて電気を消す。明朝は一段と気温が下がるのか手足が冷たくなってきた。湯冷めする前に早いところ寝てしまいたい。
    なのに性懲りも無く、一緒に布団に入り込んでくる。

    「ちょっと、何してんのよ」
    「オイラだってそういう気分なんよ」
    「知らないわそんなの」

    そうこうしている間にもジリジリと距離を詰めてくる。ああ…もう!平手か足蹴かと迷っているうちに、力づくで抱きしめられた。抵抗するとますます変なスイッチを入れてしまいそうなので、なるべく色気なく泰然と、言う。

    「わかったわ」

    頭の上に乗せられていた顎が、ぴくりと動いた。

    「何もしないならそのまま朝までいてちょうだい。あんたあったかいから」

    湯たんぽというか、毛布みたいな。

    「そ…!それはあんまりだろ…」

    あからさまに落胆した声。

    「なぜ?」

    もうすっかりそういうつもりで、こちらも目の前の体に抱きつく。自分より高い体温。洗い立ての寝巻きの、柔らかな匂い。こんなに心地良いのに。

    「あんたは、そういう目的でしかあたしと寝れないの?」

    うっ、と、葉の体が固まった。
    胸元に顔を擦り付けると、心臓の音が聞こえてくる。速い。まるで小動物みたい。

    「あたしは、こうやってあんたにくっついてるのが好きなんだけど。ダメかしら」

    ううっ、と、今度は苦いものでも食べたみたいな、変な声がした。

    「……アンナはその、嫌、なんか?」
    「なにが」
    「………する、のが」

    叱られた子供みたいにしゅんとした声が頭の上から降ってきて、思わず絆されそうになる。いけない。

    「嫌とは言ってないわ。疲れるけど」
    「……」

    正直に言うと、今度は完全に黙ってしまった。葉?と名を呼ぶと、うん、と、静かな返答がある。

    「……そーいう、わけではないが」
    「…なにが?」
    「くっつかれるのも、好き、なんだが」

    ハァ…と、重いため息。

    「が、なによ?」
    「……穏やかではないというか」

    要領を得ない言い方をする。

    「触れていると、なかなかそれは……」

    ゴニョゴニョと言葉を濁す。要するに障りがあるらしい。男とは難儀な生き物だ。

    こういうとき、かわいい女にはなれないあたしを、あたしは憎む。

    「なら触らなければいいのよ。おやすみなさい」

    ぐるりと力づくで体を捻り、葉に背を向ける。

    黙って委ねてしまえればいいのに。そうしたらこの男はあたしをますます大切にして、明日の朝もきっとご機嫌で、その顔を見たあたしも嬉しくなるに違いないのに。

    「…女も難儀ね」
    「……アンナ?」

    背後から窺うような声。もう知らない、聞こえないふり。ハァ…とまた、重いため息。諦めてくれたーーー諦めて、しまった。そうよそれがいい。お互いが、お互いに都合の良いだけの関係なんて。

    心のどこかが、しん、とする。

    「…じゃー、ガマン、する」

    不機嫌そうに言って、あたしを後ろから抱きしめ直してきた腕に驚く。

    「葉?」
    「んー…、今日、だけな」

    しんどいんよこれは……と心底辛そうに言う、その熱い吐息が背中に当たったーーー

    ところで、どくん、と、心臓が大きく跳ねた。

    「………自分の部屋で寝たらいいじゃない」

    そんな我慢するくらいなら。こんな冷たい女、放っておいて。

    「いやオイラも」

    好きだし。

    眠たそうな声で言って、そのままおでこをコツンと首元にくっつけてきた。それだけの接触。

    「…おやすみ、アンナ」

    バカみたいね。
    バカみたいねあたし。そんなことで、気分、変わるなんて。

    「……おやすみ」

    でも言わない。やっぱり抱きしめてなんて。もっとキスして欲しいし、我慢しないでとか、疲れてもいいわなんて。

    あたしはいつも、そう。あんたの声に、言葉に、自分の心を自覚する。
    恋心は、いつも遅れて。

    「…おやすみなさい」

    呟いた声は自分で思ってたよりよほど甘やかで、自分に呆れた。

    そうだ、明日はたい焼きを買って帰ろう。頭のほうをあんたにあげるから。
    あたしはあたしを励まして、幸福な気分で目を閉じた。


    おわり。
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