ちいさな恋人と。 陰陽術のせいで、瑠凛が小さくなった。小さくなったと言っても子供になったというものではなく、手のひらに乗ってしまうような大きさとなったのだ。
「あうぅ」
やはりそんな大きさでは不安なのか、俺の手のひらできょろきょろと辺りを見回している。警戒しているのだろう。
「大丈夫やで。俺がついとるから、怖いことなーんもあらへん」
「ほんとれすか」
ああ、舌が回っていなくてかわいい。「ほんまやよ」と笑いかけると、ふにゃっと笑ってみせてくれた。
「(あかん、かわいすぎて食べたなってきた。一口で飲み込めてまう)」
唾液が溢れそうになるのを必死で堪える。かわいらしいが、食べてしまっては無くなるのだから、我慢しなければ。
「ぅー……ねむれません……」
寝室に小さな机を置いて、布を何枚か重ねて布団代わりにしてやる。だがやはり慣れないのか、ぐるぐると転げては唸っていた。
「眠れへん? せやけどなあ、俺のとこに来たら潰してまうし……」
ほわほわ、と想像するのは、成人男性の体躯に潰される小さな瑠凛の姿。それはさすがに可哀想すぎるので、簡易の布団で我慢してほしいのだが。
「やぅ……さむい……」
「ああ……机が冷たいんかな? もうちょい分厚い布敷くか」
冬用の布をいくつか使用人に取らせ、敷いてあげる。少し、瑠凛の表情が和らいだように思った。
「さむくないっ」
「よかったなあ。ほな、頑張っておやすみ」
「はぁい」
瑠凛が起きてから、手に乗せて庭の散歩をしてやる。「おはな、きれいですねえ」と笑う姿が愛おしく、自然に頬が緩む。
「せやな。俺が花選んでんねん」
「ほゎ」
驚いたような顔をしてから、「すごぉい」と頬を撫でられる。くすぐったくて、少し恥ずかしくなる。
「せ、せや。あっちはもっと綺麗なんもあるんやで」
「わぁい」
嬉しそうに笑うから、こちらまで嬉しくなる。瑠凛を庭のあちこちに連れ回し、その都度説明をしてやっていた。
「道長さん、おはなすき?」
「せやなぁ。嫌いとちゃうけど……一番は景観の維持やな。綺麗な庭ある方が威厳っちゅうもんも出るやろ?」
「そうなんですねえ」
こくん、と頷いてくれる。「ええ子やね」と笑いかけた。
「道長さん、もっといっぱいみたいです」
「さよか。ほな、もっとお散歩しよ」
「はぁいっ」